ホルムズに自衛隊「独自派遣」 政府検討 哨戒機で警戒監視

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 2019年8月6日に産経ニュースの記事である。日本にとって重要なシーレーン(海上交通路)であるホルムズ海峡の安全確保に自らが汗を流す姿勢に反対するものではない。

 しかし、自衛隊の派遣となると「現状の自衛隊の実戦(実践)能力を過信していないだろうか?第二次大戦以降幸いにして戦争に巻き込まれなった反面、軍事的な経験はもとより医療救護体制も乏しいと言わざるを得ない。最新兵器だから大丈夫という安心感は何の根拠もなく、イラク・アフガン紛争時の米国・英国軍の経験からも市街戦という戦争形態の変化、死亡よりも負傷させることを主眼とし厭戦気分を促す戦略的構造の変化、文化風習をはじめ天候などの環境、IEDなどによる新しい外傷の形、などに対応できなければ戦えても勝利は得られない。

 当たり前のことであるが、どんな戦闘でも所詮人が主体である以上、兵士の精神的肉体的損傷を考えなければならない。精神的な問題では、本当に自衛隊員は敵を狙って打てるのであろうか?警官の銃は威嚇のためであるが、自衛隊員の銃は殺すためのものである。人が人を狙って引き金を引くということは、戦争の倫理的や法的な問題はもとより、個人の精神ケアが重要な鍵である。「幼いころから当たり前のことである人を殺してないけない」ということを敢えて無視させることを愛国心という大義名分だけで済ませてはいけない。兵器の良し悪しは兵器それ自体は勿論、兵器を使用する軍人の戦闘能力に因るのは周知であるが、平和憲法の下、残念ながら現在の自衛隊は「戦う」という組織を司る自衛隊員に、軍隊に必要な軍人教育いや軍心教育、がなされていない。

 身体的なケアについて言えば、2017年1月ジプチ視察の際に護衛艦「きりしま」の医療処置室を視察したが、Role1の機能しか持ち合わせていなかった。関係者はヘリコプターで陸上の医療施設に空輸するから心配ないと言っていた。軽傷(軽症)や慢性疾患の想定のみなら、確かに十分であろう。このような護衛艦の現状がこの間に改善進歩されたとは最新の予算の配分からは感じ取ることができない。

 第二次大戦以降、戦艦同士の戦闘はなくなり、洋上での戦闘形態はどのようなものなのか?、経験が非常に少なくなっているが、ホルムズ海峡への派遣では銃による銃創、タンカー襲撃事件(2016年)に使われた吸着型水雷などによる爆風損傷が考えられる。ヘリコプター搬送はあくまで安定した負傷者であり、安定化治療は実地しなければならない。Military Medicine in Iraq and Afganistanに示された英軍の経験からは、もし自衛艦がホルムズ海峡に派遣されるのであれば、Role2A(外科的蘇生や輸血が可能)の能力、英軍のMERTや米軍のAirborne FSTの設立が最低限必要とされるであろう。

 自衛隊は残念ながら設立の経緯、現在までの歴史など鑑みれば、「戦える存在」とは言い難い。派遣の主旨に隠れてホルムズ海峡派遣は実戦の経験につながるだろうとの考えなら、あまりにも軽率であろう。最悪を想定した準備を行うのはリスク管理であり、想定外の出来事であったということはリスク管理ではない。

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