マスコミで色々な検査について情報が乱れ飛んでいるが、彼らは本当に新型コロナウィルスの検査について理解しているのであろうか?知ったかぶりの報道が目立ち、市民の不安をことさらに大きくしているだけ!

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 それPCR法だ!抗体検査だ!、PCRが陰性の患者がまた感染したなど、報道各社は様々なコメンテイターを用い、一件情報提供しているように見えているが、その知識はあまりにも稚拙かつ」凡庸なるが故、かえって視聴者に不安を与えているだけと思われる。

 そこで、新型コロナウィルス検査について、今現在の知識を知って貰いたいと考え、The National Academy Press : Rapid expert consultation on SARS-CoV-2 laboratory testing for the COVID-19 pandemic (April 8, 2020)がまとめているので要点を紹介する。※SARS-CoV-2(ウィルス名であり、SARSを惹き起こすコロナウィルスSARS-CoVの姉妹株としてSARS-CoV-2と名付けた)、COVID-19(新型コロナウィルス感染症の正式名称)

 信頼できる、標準化された臨床的確証は疾病率を決定するための黄金の標準である。しかしながら、特に新たな感染症に関しては、感染を持たない人から感染を持つ人を正確に首尾一貫して分離できる高い感度・特異度を持つ検査は手に入らない。通常は被ばくされたリスクに基づく感染の可能性や臨床所見や症状を考慮する臨床的判断はCOVID-19のような感染症や人を理解するには重要である。疾患の媒体を直接検知する検査(例:ウィルスのRNAのためのPCR)と疾病に対する宿主反応を検知する(例:特異な抗体を検知する血清学的検査)の2つの一般的な検査型がある。

 

Ⅰ.ウィルスのRNAを検知する

 現在使用されている大半のCOVID-19検査は疾病媒体を直接検知し、ウィルスRNAを測定する。ウィルスのRNAは現在の感染を示し、感染力や他人に移すリスクを示唆する。しかし、個人のウィルスRNAの存在は、特に感染後期には、伝搬性の可能性のある完全なウィルスよりむしろウィルスの残渣を表している可能性もある。 SARS-CoV-2の現在の臨床検査は、逆転写酵素ポリメラーゼ鎖反応(reverse-transcriptase polymerase chain reaction : RT-PCR)、あるいは、咽頭、喉頭、喀痰、唾液のサンプルのループ媒介等温増幅(loop-mediated isothermal amplification : LAMP)を用いて、ウィルスRNAを検知することに頼っている。

①RT-PCRはCOVID-19の診断に広く採用されているが、後ろ向き研究では疾病の早期の確認においては胸部のCTやその他の臨床的・検査的所見よりも感度が低い可能性がある。疾病の経過のどんな時期でもRT-PCR陽性に基づいて診断されたCOVID-19陽性の51例の研究において、後ろ向き研究では臨床症状時に51例中35例がRT-PCR陽性であったが、51例中50例に胸部CTで異常所見を認めた。この研究にしろ他の研究にしろ最初の検査で偽陰性になった原因を明らかにできなかったが、病気のステージ、解剖学的部位におけるウィルス量の少なさ、患者によってはサンプル採取法が原因と考えられる。

②2004年にSARS-CoV(SARSを惹き起こすコロナウィルス)のために発展したLAMP法(咽頭、喉頭、喀痰、唾液のサンプル)は従来法よりより早く、より簡単に、より安い、ということが分かっている。また、LAMP法はRT-PCRに比べてSARS-CoVへの感度・特異度が高いことを示し、この利点が得られるか現在、コホート研究が行われている。

③45分で可能なCepheid’s SARS-CoV2カートリッジ、15分以内のAbbott’s ID NOW COVID-19 isothermal amplificationは迅速ウィルスRNA検知検査である。両者とも局所の能力を構築することに支援できるが、質やサプライチェーンが国民の必要性に応じられないが、迅速検査は外科手術を受けるような患者には有用である。

 臨床現場使用はまだであるが、SARS-CoV-2のためのCRISPR-Cas12 or Cas13 based diagnostic testは最近の技術を超えた利点がある可能性がある。

Ⅱ.宿主の免疫反応を検知する

 この病原体に対する特異な抗体を測定する、いわゆるSARS-CoV-2血清学検査が2つ目の検査である。有用な情報が得られるが、血清学情報の有用性と意味はウイルスRNA診断結果の意味と有用性とは異なる。血清学検査は個人が以前に病原体に被ばくされたか否かを測ることであり、病気の経過の遅れた時期の診断確定においてRT-PCRの補助診断に使われる。IgM抗体は典型的には症状発現の数日から1週間以内に出現し数週間から1か月あるいは2か月持続する。IgGより早く出現するが特異性は低い。IgGは典型的には感染後2週間には血流に出現し、数か月、症例によっては数年持続する。各種の抗SARS-CoV-2抗体は症状発現後平均5から14日でCOVID-19の患者に見られる。感染数週間の間は、同じ個体に抗SARS-CoC-2抗体とウィルスRNAが見られる。一般的に血清検査の結果は、特にIgM測定、分子学的検査よりも特異度が低い。

 季節性コロナウィルス(non-SARS-CoV-2)感染症の患者からのサンプルは陰性コントロールとして特に重要である。人口に基づいた疫学研究において、感染病原体に対する抗体の存在は過去の有用な指標であり、また、疾病拡大を防ぐ種々の国民への介在の有効性を評価できる。抗体は病原体に対する宿主の免疫を示すが、SRRS-CoV-2の症例では抗体の存在が疾病を防ぐか否か知られていない。

 四季の季節コロナウィルスへの人間の免疫反応、以前のコロナウィルスの出現を熟考することはここではとても重要である。ほとんどの人間は普通のウィルス(hCoV-OC43、hCov-229E、hCov-HKU1、HCoV-Nl63)に抗体を持っているが、人間は未だに毎冬これらのウィルス感染症に罹患する。何故起こるのか?、これらのウィルスに対して血液の抗体は何を認識するのか?何故自然発生の抗体は疾病を防がないのか?どのように毎年のコロナウィルスは突然変異するのか?何故夏になくて冬に見られるのか?に関するデータは限られている。

 MERS-CoVに被ばくした個人における抗体反応の分析から、一般的に商用ELISAキットは良い特異度とであるが、研究所で使用されるプラーク減少中和試験(a plaque reduction/neuralization titer assay)に比べ感度が低い。全ての検査室に認められるような高い感度と特異度を持つ標準の設立が真にSARS-CoV-2に被ばくし免疫の可能性を決定し有効な結果を得るために必要である。SARS-CoV-2に対するT細胞反応の測定は抗体分析の補助に、MERS-CoVのような流行と同じように、有用である。

Ⅲ.感染力の決定

 現在のRNAに対する分子テストは生存ウィルスがいるかいないかの決定はできない。例えば、ウィルスRNAが糞便サンプルの中に高値でも、感染性ウィルスが典型的にこのサンプルから分離されない。ウィルスRNA中間体のあるタイプはその検体の中で活発な複製を示すかもしれない。これらのRNAは人間細胞の中のウィルス生命サイクルの間産生されるが、成熟したウィルス粒子には取り込まれない。このようにRNAの存在は、以前集合した生存ウィルスよりむしろ、活動的な複製を示す。ウィルスの蛋白に基づく検査は、蛋白はウィルスRNAよりも早く劣化するため、遺伝子検査よりも感染力を検知するのは優れている可能性がある。

まとめ

 ウィルスRNAを検知するものとウィルスに対する人間の抗体を検知するものの2つの検査が一般的である。前者は一般的に活動的かつ進行形の感染を示し、特に感染経過の初期に他への感染性を疑わせる。感染後数週間ウィルスRNAの検知が持続することは感染を起し得るウィルスがいることと同意義ではない。

 抗体検査は過去に被ばくし免疫が確立された証拠であるが、抗体と感染予防の関係はこのウィルスに関しては確立されていない。

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