特措法改定で罰則規定を設ける事にはもっと踏み込んだ議論が必要である

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 特措法に関しては、『法律の適用対象や適用時期を区切ることで、いわゆる「狙い撃ち」が可能となることが考えられ、これが日本国憲法第14条に定められている平等原則に違反するかも問題となる。』が『立法府と行政府の関係が決定的に破壊されることがない場合においては、当該立法がただちに権力分立に違反するものではないとする。』『平等原則に関しても、当該立法が社会国家の要請に基づく実質的合理的な取り扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、これがただちに平等原則に違反するものではないとする。』との解釈がある。

 法律的な解釈を論議すべきことも重要であるが、一般的には『公共の利益を守るため、個人の権利を制限する』という考え方をどこまで認容するか?が大問題である。倫理でも『二重忠誠』の問題、つまり、公共の利益を優先するか、個人を優先するか、は常に問題になっており、答えは常に一様ではない。また、民主主義の多数決は決して少数者を擁護しないからこそ、少数者を慮る必要がある。

 飲食店や居酒屋の営業を行い生計を立てることは憲法で保障されている基本的人権である。これに対して、特措法を改定して自粛要請ではなく、罰則を伴った自粛強制にするのであれば、COVID-19の感染源として飲食店や居酒屋が明らかに感染源となっている科学的証拠を示すべきであろう。当初、目の敵にされたパチンコ店は本当に感染源として科学的な証拠に基づく措置であったのであろうか?単に人が密になるという曖昧な感情や推測に基づいて言われたのではないと断言できるのであろうか?。当時を振り返ると、政府や行政組織、一部の政治家やマスコミに煽られた感は否めないし、今回も同じ臭いや風潮が感じ取れる。先日紹介したrapid expert consultation on understanding causes of health care worker deaths due to COVID-19 pandemic(December 10,2020)の中で『Duke University Health System(北カルフォルニア)の前向き研究では、38%が市中肺炎、22%が医療関連、40%が不明であった。院内感染の内、70%が他の医療従事者に対するマスクをしない暴露であり、30%がCOVID-19患者の直接ケアによるものと判断された。』という報告からは、もはや飲食店や居酒屋が主なターゲットではなくなっていると考えられる。一方、我国ではこのような科学的データが一切公表されず、ただ漫然と感染者と重症者の数のみが公表されて、毎日毎日増えた!増えた!と危機感のみが煽られている。

 悪行をなしている訳でもなく、ただ生計を立てているに過ぎない日常の生活行動そのものが、公共の利益という名の下に、『悪』のように世間で評価判断されてしまっている飲食店や居酒屋の昨今である。マスコミも連日のように飲食店や居酒屋の功罪を取り挙げて市民を煽り、自粛要請を断った飲食店や居酒屋を『悪』と決めつけ一部の政治家は声高に特措法に罰則規定の盛り込みを叫んでいる。

 しかしながら、特措法自体は個人の生活権を奪う可能性があり、まして営業自粛要請拒否に罰則を課すとなればさらに個人の権利を著しく奪う行為になる。当然のことながら、政府や政治家に絶対的な信用信頼があってこそ、実践できるものである。支持率低下に踊らされ右往左往している政府、公共の利益のみで個人の権利を訴えないマスコミ、に煽られず、冷静な議論が今こそ必要である。特措法に罰則規定を盛り込めば、例えば、COVID-19患者の入院要請を断る医療機関に罰則規定を適用するなど、あらゆる機関や組織に、『公共のため』という大義名分の下、足枷手枷がはめられ、政府に従わないものは『悪』という事態を招きかねず、極論すれば第二次世界大戦時の風潮に似たものになってしまう危険がある。

 1924年大政翼賛会と新聞社が国民決意の標語を募集した大東和戦争一周年記念の企画で選ばれた戦時中の有名な標語『欲しがりません勝つまでは』が独り歩きを始め、当時の政府に踊らされ、悲惨な戦争に走らされた我国である。政府や一部の政治家、マスコミの踊らされ過ぎてしまって国家の安定と秩序の崩壊が生まれた時代を忘れてはいけない。

 特措法に罰則規定を加えるを与党野党共にあまりにも性急に来年早々には発令されるかのような展開であるが、市民はこれに踊らされず、冷静な議論を要望すべきである。

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