A2AD(anti-access/area denial:接近阻止・領域拒否と訳されているようだ )threat、 CDO( contested, degraded, or operationally limited)environmentに対応できるCCC(combat casualty care:傷病者治療)体制の構築を急ぐ必要がある。

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日本の防衛を論じる人たちに「 Preparing for the Future of Combat Casualty Care: Opportunities to Refine the Military Health System’s Alignment With the National Defense Strategy」を読むことをお勧めしたい。敵の長距離精密ミサイルシステムにより負傷者数増大はもとより戦略戦術も著しく変化した将来の戦闘において、軍隊の戦闘能力維持のために医療システムを見直しをまとめた本である。 戦闘能力を支えるのは人員・人材である。ただ兵器を近代化するのではなく、戦闘前・中・後の医療システムの変革・近代化が必要と説いている。

 中国、ロシア、イラン、北朝鮮の長距離精密ミサイルシステムはかつては想像できなかった数の負傷者が発生するばかりではなく、戦略戦術的にも戦場に展開できる米軍の能力が制限され、また作戦遂行の動きの自由度が制限される脅威が生じる(A2AD)一方、そのような敵の脅威は長時間持続し得ないため、ミサイル一斉射撃によりインフラが破壊された後、防衛共同体はインフラを修復し、機能が低下し制限された環境下(CDO)で戦闘しなければならない。このように戦闘や戦場の環境の変化が将来の戦場の姿である。

ミサイルの脅威に対しては、積極的作戦としてパトリオットミサイル発射台のようなミサイル迎撃システム、受動的作戦として敵のミサイル破壊、核シェルター、燃料タンクの点在などが挙げられる。しかしながら、インフラやロジスティクを守る方法よりももっと広い視点が重要である。砲弾やミサイルは米軍の人材に多大の負傷者を生じ、結果的には米軍の戦力を減退させる。飛行機を維持する格納庫を攻撃するミサイルはスペアパーツ、装備、格納された飛行機、その他の資器材に障害を与えるだけではなく、米軍が戦闘能力を維持するための人材・要員の多大の損害を与える。米軍の作戦遂行能力を維持するのは、彼らに対する医療支援が重要な要素である。この観点から医療体制を見直し、新たなシステムを模索してる状況を語っているのが本書である。

 一部議員の敵地攻撃能力の議論も重要ではあるが、これは後述する軍事的な受動的作戦に過ぎず 、軍事的な積極的・受動的作戦を支えるのは人員・人材であり、防衛医大や医官も含めた真剣な議論が望まれる。

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