患者に埋め込まれた爆発しない兵器(unexploded ordnance :UXO)

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 戦傷を治療する上で、患者の体内に爆発物がある場合の治療方針を定めておくことは非常に重要である。このことに関した論文は少ないが、水陸機動団のような実践を想定した部隊を作った以上はこのことは避けては通れない。戦う自衛隊員を治療する体制が盤石であってこそ初めて勝利が得られる。旧大日本帝国陸軍のような精神主義では戦えないし、戦っても負ける。

 UXO負傷者の取り扱いに関する「The Evolution of Forward Surgery in the US Army from The Revolutionary War to the Combat Operations of the 21st Century」の記載を紹介する。

 UXOはRPG、大口径爆薬弾、迫撃砲弾、M79やM203のような手榴弾などを含むが、文献上、残存あるいは突き刺さったUXOに関する論文は稀である 。UXO患者は通常爆風損傷ではなく、重傷鈍的外傷である。医療提供者は患者を医療施設に入れる前に、患者、特に現地人や敵、のポケットにある弾薬や兵器、「loose UXO」と呼ばれるが、をチェックする。「loose UXO」は患者輸送や治療の際に落としたり押したりする結果、無くしたり爆発するので、UXOと同等あるいはそれ以上に危険である。1999年「Removal of unexploded ordnance from patients:A 50-year military experience and current recommendations(患者からのUXOの除去:50年の経験と最近の推奨)」がMilitary Medicineに記載され2004年にEmergency War Surgeryが発刊されるまで唯一の有効なガイダンスであった。

 「Removal of unexploded ordnance from patients:A 50-year military experience and current recommendations」には第二次世界大戦からの36名のUXO症例が記載されている。4例は到着時に瀕死あるいは死亡しており、残り32例は生存しUXOが除去され医療職や爆破処理(explosive ordnance disposal:EOD)による負傷はない。36例中、4損傷は頭部頸部、14損傷は四肢、17損傷は体幹、残りの損傷は部位の記載がない 。

 Emergency War Surgeryでは、現地指令やEODに迅速に知らせ、必要のない人員の退去、必要な人員への防護服着用、主要な治療室を使わず、予め作っておいた安全区域の使用、を勧めている

 UXOのヒューズは武装され異なる方法(衝撃、電磁波、レーザー、回転/遠心力、加速など)で引き金を引くため、①不注意に武装したり、UXOや患者を回転させることによって装置を爆発させることを避ける、②電気装置やモニター装置を避け、③金属金属の接触を避け、④ゆっくり患者を移動し、装置の急な移動や衝撃を避ける

 酸素は安全に患者に提供できるが、酸素ボンベや酸素発生機は二次爆発を防ぐため患者の近くには置かない。このタイプの負傷を負った多くの患者は全身麻酔を必要とするが、禁忌の吸入ガスの代わりに、静脈麻酔を使うべきである。必要に応じ静脈麻酔は、麻酔をサンドバッグや爆風壁の後ろの安全な場所に残し延長チューブから投与できる。全員麻酔が不要なら脊髄麻酔が可能である。

 その他として、放射線使用は安全だが超音波、CT、その他の検査は避ける。可能なら装置毎一塊に除去しその他の方法が失敗したら切断を考慮する。一度UXOが除去されたなら、主要手術室に移動し、最高レベルの外科、蘇生治療を行なう。トリアージが必要な状況下では、「最大多数に最良を」が原則であり、UXO負傷者は一番最後に治療するべきである。患者が重傷であったり、UXO除去の危険が高度なら患者は死亡予期群である。

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