『情報』の伝達について

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 後手後手対策であるとの誹りを回避するような安倍首相の矢継ぎ早の対応発表やマスクばかりではなくトイレットペーパーやティッシュペーパ―の不足を見ていると、『情報』に対する基本的知識が不足していると思われる。

 明治初期に仏軍の軍事教本の中の『renseignement』という言葉は『敵状を報知する』という意味で『状報』と翻訳され、人間は情報を処理する動物であり、その後広く使用されていく中で『情報』に変化していった。『状』ではなく『情』という単語からして心情的な要素が含まれいる。従って、『情報』の伝達に関しては正しく伝えるための情報伝達ツールなどの純粋に工学的な問題の他に、人間工学的な問題を含んでいる。つまり『情報』伝達とは、正しく伝わっても『正しい行動を惹起しない』と意味がない。特に災害時には、伝える側が聞き手に『正しく行動させる』情報伝達を行わないと被害が拡大する。

 情報の送り手は迅速性と正確性を求めるのみではなく、信頼性と分かり易さを必要としている。例えば、菅官房長官の会見では、日本の総人口は約1億人なのに、何故マスクの生産量が1億枚を超えたにも拘わらず未だに買えないのかの説明がないし、また、この先の具体的な販売スケジュールもないので、政府の発表の仕方はかえって市民の不安をますばかりである。また、安倍首相の学校閉鎖の矢継ぎ早の対応もその成果や期間が具体的に示されていないため、かえって政府自身が慌てているとの印象を市民に与え不安を増長しているだけである。政府の今の一番やるべきことは失っている信頼を取り戻すような情報発信・伝達である。

 一方、市民は流言(根拠が不正確にも拘らず広がってしまう情報)やデマ(政治的な意図を持ち相手を貶める(オトシメル)ために流される情報)に惑わされないよう、日頃から情報のリテラシー(情報を見抜く能力)を磨く必要がある。いたずらな不安は不安を増長し、被害を大きくするだけである。

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