Potential Environmental Effects ofNuclear War (2025)

http://nap.nationalacademies.org/27515

 核戦争の地球環境へ及ぼす影響について、まとめた論文である。ソ連・ウクライナ戦争において、時々プーチン大統領が戦術核兵の使用を仄めかしている昨今、大いに参考になるので、重要なポイントをまとめた。

①環境破壊の深刻さ
・爆風、放射線、火災などにより、人命だけではなく、大気・水・土壌といった自然環境にも深刻な影響をもたらす
・放射能汚染により水は飲めず、土地は耕作不能になる

②火災と煙による気候への影響
・大規模な都市火災で発生した煙は成層圏まで達し、長期間に渡って太陽光を遮る
・結果として、地球の気温が低下し、光合成や農業に大きな影響が出る(核の冬)

③生態系への影響
・植物や動物の生物的多様性が損なわれ、食物連鎖に著しい障害が生じる
・陸生動物、海洋動物の生態系に対して、気温・降水・光の変化が影響を及ぼす

④社会・経済への影響
・食料生産の激減による飢餓
・癌や急性放射線障害による健康被害
・経済活動、流通、医療などの社会基盤の崩壊
・世界経済や貿易ネットワークの大混乱

⑤現代のリスク
・核保有国が増え、局地戦でも地球環境の被害を起こす可能性がある
・核戦争の影響は数週間から数十年に渡って多面的かつ長期的に及ぶ


 最新の地球システムモデルやスーパーコンピューターを駆使して、より正確な予測が可能になっているが、データの不確実性や未解決の問題もある。しかしながら、「核戦争は気候・環境・生態系・人間社会に壊滅的かつ不可逆的な影響をもたらし、国家・国際機関は予防と政策決定のための科学的根拠として本論文の研究を活用すべきである」と結論している。

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