シナリオ訓練①夜間パトロール中に銃創

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NAEMT’s Prehospital Trauma Life Support : Military Eighth Edition 2014:742-743
あなたは夜間作戦の一部としてアフガニスタンでメディック業務を担当している。夜間に田んぼの淵に沿って移動している最中に4人編成チームの一人が撃たれ田んぼの溝に落ちた。あなたと負傷していない隊員は身を守り応戦した。あなたは負傷兵に声をかけ、ケガがどの程度か聞いた。彼は反応し、ちょうど膝の上を撃たれ、安全な場所に身を隠したが動けないとあなたに告げた。

①あなたは負傷について何を知っていますか?
 彼は理路整然と話ができるので、十分な血圧と気道は開通している。

②次に何が知りたいですか?
 出血の程度と他の部位の外傷の有無を知る必要がある。4人の敵からの攻撃によりあなたと負傷していない他の2人は忙しく、応戦なしではその場を離れられない。あなたと他の2人が応戦中の間は、あなたは負傷者に『銃創部からどの位出血しているか?』を聞くだけである。彼は『出血の状態は答えられないが脚はひどい状態で戦闘服のズボンの上から出血を感じる』とあなたに告げた。あなたは彼に『他の部位の負傷はないか?』と聞くと『おそらくないが、脚のけがひどい』と返事した。

③次に何をする?
 あなたは負傷兵に『負傷した脚にタニケットを巻き、可能なら戦闘に復帰するように』と告げる。CUFでは、メディックが負傷兵に最善を尽くしチームの残りの者が身を守り応戦する。負傷者のところに行ってあなたが死んだら負傷者は犠牲者になるし、チームの残りの隊員や彼自身にも良いことではない。このような状況では圧倒的な懸念は敵の砲火の制圧であり、負傷兵やメディックの銃も含めたすべての銃が必要である。戦闘行為が可能、さらに(あるいは)作戦遂行が可能な負傷兵である。負傷兵は自分の脚にタニケットを巻ける訓練と装備を持たねばならない。タニケットが有効な負傷なら自力で生命危機的四肢からの出血を処理できる可能性がある。負傷兵とメディックは身を守り戦闘に参加できる。この方法により負傷兵、メディック、他の残りの隊員がさらなる負傷をする危険性を最小限度にできる。
 数分間の激しい戦闘後、敵を制圧し負傷兵のところに向かう。田んぼの溝の2インチ深さの泥水の中に仰臥位でいる負傷兵を見つけ、彼は意識があり見当識もあるが激しい痛みを訴えていた。負傷兵の橈骨動脈の脈は蝕知し左脚だけ撃たれたとあなたに告げた。あなたが戦闘服のズボンを切ると大腿骨の開放骨折があった。負傷兵の疼痛はひどくあなたが脚を触ることをやめさせた。

④この時点で戦略的に最も重要なことは何か?
 あなたのチームは脱出を求める必要がある。負傷者を動かすことが困難で4人の敵は現在武装解除ができ、その場所で後送を求める選択をする。

⑤負傷者のために何をする必要があるか?
 止血を確認し、他の外傷の有無を調べ、鎮痛剤投与し、抗生剤を投与し移動に準備をし、低体温を予防する。

⑥どのようにすべてを行うか?
 敵が近くにいるのではライトは使えず、また負傷兵はあなたに創部を触らせない。出血部位や出血量の十分な評価が困難であったり、出血が続いていたら負傷者の大腿に1番目のタニケットより上位に2番目のタニケットを巻く。負傷部位以外を触り、他の負傷がないことを確認する。臨床的な状態は変わらない。
 コンバットピルケースからモキシフロキサシンを与え、800mgOTFCを頬にふくませる。創部全体を愛護的に被覆し、右脚に沿って左脚に副木をあてる。タニケットが正しい部位に正しい力で巻いてあることを確認する。負傷者の臨床的状態は変わらない。意識があり疼痛がひどいなら2回目のOTFCを与える。
 負傷兵の戦闘服を脱がせ、あなたは他の戦闘に出かけるため、戦闘服の下にReady Heat Blanketを敷き、Heat Reflective Shellで覆う。

⑦この時点でさらに他に何をするできか?
 負傷者は止血操作が必要で後送を促進する。

⑧さらに高度な処置を受けるまで負傷者に何をするか?
 負傷兵の臨床状態を観察する。あなたは負傷兵が嗜眠傾向になったことに気が付く。

⑨負傷兵の意識レベルが低下した原因として最も重大なものは?
 出血の持続

⑩何が知りたいですか?
 脈の性状:橈骨動脈は速くて弱い
 タニケットは?:部位はずれていないが出血が続いている
 呼吸は大丈夫か?:若干早いが努力性呼吸ではない

⑪何が起こっているのか?
 出血の持続による出血性ショック

⑫なんでそう思うのか?
・意識と橈骨動脈の脈の性状が悪化
・タニケットは十分なように見えるが出血が続いている
・呼吸が若干早い
・1,600mgOTFCは若い健康な男性の急性疼痛には過量ではない。この量なら意識状態の変化が起こる
・出血が『防ぎ得る戦傷死』の第一位の原因
 
⑬何をする?
 2個のタニケットのまき直し。

⑭他には?
 負傷兵は出血性ショックのために大量輸血が必要になるので、生殖100mlに溶解した1gTXAを投与する。抹消静脈路確保が困難なら胸骨IOIを実施する

⑮次に何をする?
 Hextend500mlで蘇生する。ボーラス投与10分後、嗜眠傾向や橈骨動脈が少し改善した。タニケットをチェックし、部位を確認ししっかり巻く。

⑯次に何をする?
 後送ヘリコプターの到着を待つ間にTCCC傷病者カードを完成させる。