ミッドスケール製造とは、①研究段階と量産の間(技術成熟度)、②単品試作と大量生産の間(生産量)に位置する製造領域を指す。米陸軍・海軍・空軍(3軍)が必要とする先端材料・部品を迅速に実用化・安定供給するために不可欠であり、研究成果が「死の谷(TRL3–7)」で止まる問題を解消する狙いがある。主な課題を表にまとめた。我国でも国家戦略の防衛構想としては、ミッドスケール製造問題にも焦点を当てる必要がある。
| 主な課題 | |
| 技術・運用 | ・小規模試作から中規模生産への移行で材料特性が変化し、スケールアップが困難。 ・重要材料(特に火薬・エネルゲティクス)のサプライチェーン脆弱性。 ・中小製造業(SMM)の減少、データ連携不足、スマート製造導入の障壁。 |
| 経済 | ・中規模生産は投資リスクが高く、収益性が低い。 ・大企業は関心を持ちにくく、中小企業は資本・人材不足。 ・長期ロードマップと投資判断の不在。 |
| 政策 | ・調達・契約プロセスの複雑さ、輸出規制、規制負担。 ・国立研究所設備へのアクセス制限、IP・データ共有ルールの未整備。 |
4つの解決方向性を提示している。
- 物理的試験・製造拠点の整備
・国立研究所・大学の共有パイロット施設整備、柔軟で再構成可能な設備。 - デジタル化(データ・AI・モデル)の推進
・産業横断の「デジタル・インターステート」構想。
・物理モデル+AIによる迅速シミュレーション、スマート製造・DT(デジタルツイン)。 - 人材の育成
・施設運用・データ活用ができる熟練人材の育成・定着。
・産学官の兼務・交流促進。 - 経済・組織の整備
・製造R&Dへの国家的投資調整、デュアルユース促進。
・SBIR、税制、VC等を組み合わせた投資経路の整備。
・調達・手続きの簡素化。




