『人類が新型コロナに打ち勝つ』という発想が『新型コロナウィルス』対策の後手後手の源

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 菅義偉首相は1月18日午後の衆参両院本会議で施政方針演説の中で『夏の東京オリンピック・パラリンピックは「人類が新型コロナに打ち勝った証し」として「世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意の下、準備を進める」と語った。』との報道があった。この言葉に実に違和感がある。 

 ウィルスは人類同様自然界に存在し、人類はインフルエンザウィルスも含め、従来から様々な影響を受けてきた。すなわち、ウィルスの発生増殖は自然現象とも言える。天然痘のように世界撲滅宣言が出された感染症もあるが、感染症が世界から撲滅されることは一般的には稀である。

 新型コロナウィルスは現時点で根本的な抗ウィルス剤がない限り根本治療は不可能であり、重症者には人間の自然治癒力を期待しつつ、生命維持装置にて支持療法を行っている。ワクチンがさも特効薬のように巷で報道されているが、これとて人間自体の免疫力に依存しているものであり、特効薬というより予防・軽減策である。学問的に考えた場合、根本治療薬が開発されない限り『新型コロナに打ち勝つ』ことは、不可能であり、如何に新型コロナウィルスと共存していくか、また、如何に重症化を防ぐか、が望まれている。すなわち、感染するか否かよりも、重症化を如何に防ぐかが喫緊の課題と言える。

 新型コロナウィルスを絶滅できない以上、対策の中心にするべきは、あくまで感染の動向を見据えた長期的な展望と戦略であり、感染対策と全く無関係な『オリンピックを新型コロナウィルスに打ち勝った証』という態度は、オリンピックを行うための詭弁にしか聞こえない。

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