小児に対する「ワクチンの発症予防効果」をどう判断するか?この記事で小児ワクチン接種は進むのであろうか?

Pocket
LINEで送る

 「米製薬大手ファイザー(Pfizer)は22日、同社が開発した新型コロナウイルスワクチンの5~11歳を対象とした臨床試験(治験)で、90.7%の発症予防効果が示されたと発表した。」という報道があった。「90.7%の発症予防効果」を親御さん達はどう判断し、親として小児ワクチン接種の有無・是非を決定するのだろうか?

 経済行動学から見た人間の意思決定の癖の一つとして「確実性効果と損失回避から成り立つプロスペクト理論」というものがある。客観的確率と主観的確率の間には乖離があって、比較的高い確率のものを主観的にはより低く感じ、比較的低い確率のものをより高く感じてしまう。確率を認識した上で不確実性が伴う意識決定をする際には、確実なものとわずかに不確実なものでは確実なものを好む。また、利得を生じた場合の価値の増え方と損失が生じた場合の価値の減り方は後者の方が大きい。利得と損失の関係を示す曲線が自身の参考点(原点)の右と左で異なり、損失の曲線の傾きが大きいので、損失の場合は少しの損失でも大きく価値を失うことを意味し、損失回避とは利得よりも損失を大きく嫌う。例として千円拾った時と千円落とした時の嬉しさと悲しみを図に描いた。

 

 ワクチンの小児接種について①「ワクチン接種によって100人中90人が新型コロナウィルス感染症に罹患しない」という利得の面に注目させるとワクチン接種を受ける選択肢が高く評価される。しかし、②「ワクチン接種しても100人中10人は新型コロナウィルス感染症に罹患する」という損失の面に注目させるとワクチン接種を受けない選択肢が高くなる。意思決定の際には、注目する面を利益の側に設定するか、損失の側にするか、は非常に大きな影響を及ぼしている(フレーミング効果)。注目する面を利益の側にある場合の選択は「確実性効果(ワクチン接種で90%が罹患しない)」が現れ、損失の側にある場合の選択は「ギャンブル的認知バイアス(ワクチン非接種でも罹患しない可能性が10%もある)」が出る。

 さらに個人では迷うから皆で相談するとどうなるのであろうか?「集団意思決定のリスキーシフト」と呼ばれる現象、つまり、「ほとんどのジレンマ状況では集団で決める方がリスクの高い側に寄る」、が起こる。 この現象は会議でもよく経験することであり、最初は「大丈夫かなあ?」と危ぶんでいても、「声の大きい、威勢のいい発言」に引きずられ、終わってみたらリスクの高い結論に達していたということは日頃からよく経験する。

 このように経済行動学から見た人間の意思決定の特性は非常によく研究されており、我々の通常の消費活動なども操られている面が多々ある。主催者がワクチン接種を推進したいなら利益面に注目するように仕向け、主催者がワクチン接種を進めたくないなら損失面に注目されるよう仕向けられている。 ワクチン賛否議論も、主催者側の賛成・反対の主旨が達成できるように仕組まれていることを念頭に置き、ワクチン賛否議論を見ていく必要がある。

 第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料3(2020(令和2)年10月2日)「ワクチンの有効性・安全性と副反応のとらえ方について」の中に、(参考)平時に疾病等を発症する頻度(いわゆる「ベースライン」)について、以下の記載がある。

 ①65歳以上の高齢者の救急搬送件数は年353.9万件(平成30年 救急・救助の現況)。高齢者人口3,588万人、年間で10人に1人が搬送されている→毎日3,650人に1人が搬送されている計算。3,650人がワクチン接種をしたら、うち1人はワクチン接種とは関係ない理由で24時間以内に救急搬送されることに相当。仮に健康状況にかかわらずワクチン接種をした場合(※) 、単純計算では、3,650万人が接種したら、24時間以内の救急搬送が10,000件生じることになる。②65歳以上の死亡数 約123万人(平成30年人口動態調査より)年間で29人に1人が死亡、毎日約10,000人に1人が死亡している計算になる。仮に健康状況にかかわらずワクチン接種をした場合(※)、単純計算では、約3,600万人が接種したら、24時間以内の死亡が3,600件生じることになる。③新型インフルエンザの予防接種では高齢者の接種後の死亡例が多数報告されたが、個々の症例の評価の結果において、死亡とワクチン接種との直接の明確な関連が認められた症例は認められていない。※実際には接種時には健康状況等を確認するため、こうした単純計算がそのまま当てはまるものではない。

 既知である事象の年間の発生確率を用い、新事象の発生数を推定・推測し、新事象の発生数の高い・低いを決める方法である。諸条件が同じならば、これは新事象の是非・可否については如何にも科学的な根拠に見える。人間の意思決定環境には、①確実性下の意思決定(選択肢を選んだことによる結果が確実に決まってくるような状況での意思決定)、②狭義のリスク下の意思決定(選択肢を採択したことによる結果が既知の確率で生じる状況)、③不確実性下の意思決定(選択肢を採択したことによる結果の確率が既知でない場合の意思決定)があり、この資料は②の意思決定環境に基づいた推論といえる。今回の新型コロナウィルスは全くの新種で従来の経験則や経験値が当てはまらないとすれば、③の意思決定環境に基づいた対応を講ずるべきであったと言える。この意思決定環境の選択の間違いがその後の政府の新型コロナに対する危機管理の失敗に繋がっていったと言っても過言ではない。

 現在の世界は国の指導者には高度な危機管理能力が要求されている。しかしながら、危機管理の基本となる、リスクの認知的基盤(反応モードによる非一貫性、フレミング効果による非一貫性、焦点化仮説と判断の非一貫性、焦点化と信頼の形成)、3つの意思決定環境、人間の行動特性、等を理解・実践している指導者は現在の日本には皆無であり、大きな問題である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください