Army combat trauma care in 2035 : Proceedings of a workshop&#8212 ; in brief(2020)

(http://nap.nationalacademies.org/25724)

2035年の陸軍戦闘外傷治療:ワークショップの議事録概要(2020)

全米科学・工学・医学アカデミーは陸軍研究開発委員会(the Board on Army Research and Development : BOARD)の後援の下、2019年に軍、研究者、医療、諜報の専門家によるワークショップを開催し、2035年の高強度紛争で兵士の生存率を向上させる可能性のある陸軍の戦傷医療の将来と新たな医療の進歩について検討した。

3日間開催され、各々のテーマは以下の通りである。

1日目:戦傷医療の主要要素、関連システム、将来の運用環境

2日目:パートI;軍事指導、計画訓練、パートII;組織とリーダーシップの要件

3日目:パート;人間のパフォーマンス、パートII;機能的成果の改善のためのバイオエンジニアリング、パートIII;最終的な感想とまとめ

ここでは、3日目のパートIIIのまとめを以下に記載しておくが、関係者の方々には是非自ら読んで頂きたいと思う。日本の自衛隊を鑑みれば、現在はもちろん将来も戦える自衛隊にはなり得ない現状を憂うべきと思われる。

テーマ1 :参加者の何⼈かは、この⽂化を浸透させることができるのはトップレベルのリーダーシップだけである、と思った。Kotwal氏は、直接の責任と所有権の⼀部として、ライン組織が戦闘外傷治療と戦闘医療治療 (CTC‑CMC:combat trauma care and combat medical care) の利用を⼀貫して考慮していないと思った。

テーマ 2:複数の参加者はトップのリーダーシップが多くの特定されたギャップに対処しなければ、2035年に向けた研究開発活動(research and development:R&D)の影響と有効性は低下するだろうと考えた。Kotwal氏は、このレベルのリーダーシップのコミットメントがなければ、変化はほとんど期待できないと付け加えた。

テーマ 3:参加者の何⼈かは、トップリーダー向けの 2つの課題を支持し、Bagian氏はそれを次のようにまとめました。(1) 軍司令官は準備態勢を確保するための中核的な責任として、CTC-CMCを⾒なすべきであり、そうすれば、特殊作戦部隊や通常部隊がこのアプローチを採⽤していることが実証しているように、結果は改善する可能性が高い。(2) 軍司令官は、CTC‑CMC資産が訓練され、装備され、⼈員が配置され、他の支援資産 (情報、ロジスティクスなど) に求められるのと同じ優れた基準に従って責任を負うようにすべきである。

テーマ 4:参加者の何⼈かは、議論された R&D項⽬のいくつかに共感し、多くの参加者が複数のR&Dカテゴリ、特にバイオマテリアルに共感した。Bagian氏の発言では、次のような横断的なギャップが指摘された。1.研究開発のリーダーシップと⼀部の研究者は個⼈を再び戦闘に参加させることに重点を置いていない。2.センサーが個⼈にもたらす利点を認識していない。3.戦術、技術、テクノロジーが戦力増強要因として機能するという事実を受け⼊れていない。4.改善イニシアチブ(R&D など)の成功は指揮官の承認にかかっている。5.死傷者データと防護システムの設計および最適化(特に防護システムのR&Dの場合)とのリンクが不⼗分である(Kotwal氏は、データが機能的に使⽤できることを確認することを強調した)。6.研究開発やその他の改善を支援するために、より業務に関連した指標とデータが必要である。(Kotwal氏は、そのデータを⼊⼿するには、指揮官がデータの収集の重要性を強化する必要があると強調した)

テーマ5:参加者の何⼈かは、これらのギャップのすべてではないにしてもいくつかは、長期的な研究開発を待たずに、そのための義務と資金があれば、近い将来に解決できると考えていた。これらの問題のいくつかを浮き彫りにした国家外傷ケアシステム(National Trauma Care System)などの過去の研究や、過去に小規模ながらも熱⼼なグループによって推進された TCCCの成功に言及し、Bagian氏は⼀貫したトップリーダーシップの⾏動が取られることを期待した。この希望は何⼈かの参加者によって共有されているようでした。

最後に、Bagian氏はワークショップで生み出された次のような考えをまとめて提⽰した。

1.個別のケアや栄養も含め.⼈間兵器システムのパフォーマンス向上をカスタマイズしていない

2. 2035年の死傷者発生の可能性を考慮した訓練の規模設定がされていない

3.健康促進および保護活動に対する指揮官の責任感がない

4.個々の戦闘員、部隊、⽂化、任務に合わせた医療のカスタマイズがない

5. 7つのフィットネス領域における現在の縦割り(silos of excellence:卓越性のサイロ)は、すべての統合を妨げている((※フィットネスに関連する一般的な7つの分野を挙げると、心肺持久力 (Cardiovascular Endurance) – 有酸素運動能力、例えばランニングやサイクリングの持久力、筋力 (Strength)、筋持久力 (Muscular Endurance)、柔軟性 (Flexibility)、バランス (Balance)、敏捷性 (Agility)、体組成 (Body Composition))※サイロとは企業のある部門が別の部門から孤立している状態を指す)

6. すでに開発された技術を実⽤化し、改良する能力がない

7. 軍事医療活動を合成訓練環境に統合せず、訓練を個別化するために国防総省の他の場所で使⽤されているデータと最先端のエンジニアリング知識を活⽤している

ennifer MG, Jeremy CP, Mason MH et al : The “Survival Chain” Medical Support to Military Operations on the Future battlefield. JFQ 112 1st Quarter 2024

(https://ndupress.ndu.edu/Portals/68/Documents/jfq/jfq-112/jfq-112_94-99_Gurney-et-al.pdf?ver=MZXEBVenbNPm4rgWNQHJUA%3d%3d)

将来の戦場における軍事作戦への医療支援についての提案であり、とても興味深いので紹介する。米軍は現在まで階層的治療システム(Role1から5)を構築し、実践して戦傷での最適な治療を提供してきた。しかし、現在の国家防衛戦略においては、将来的に同等の能力を持つ敵に対する大規模攻撃戦闘作戦(large-scale combat operations : LSCO)の脅威が予測されており、現在の治療戦略の課題を分析している。戦闘形態が変化推移していく中で、戦傷医療の形態も進化するべきであり、戦傷を学び実践せざるを得ない自衛隊医官は一読した方が良いと思われる。

America in the future of high-tech warfare(ハイテク戦争の未来におけるアメリカ)の著者であるChristian Broseは戦闘インフラの再設計を提案し理解し、作戦上の優位性を獲得するには敵よりも早く判断し、行動するに必要な力(例えば致死性対非致死性)を投入する必要がある。著者らは将来の戦場で医療上の優位性を獲得し維持するためには”kill chain(軍事で使用される言葉であり、攻撃の構造について、「目標の識別」「目標への武力の指向」「目標を攻撃するかどうかの決心と命令」「目標の破壊」に分類したもの。)”と同等の戦傷者ケアサポートを提供できる医療上の概念として”survival chain(救命連鎖)”を提案する。

現在の国家防衛戦略(National Defense Strategy)では、医療後送の全体的な機動性が制限され、医療ユニットの生存リスクが高まり、重要な兵站の適時性と堅牢性が資源される可能性のある同等レベルの敵に対するLSCOが予測されている。

従って、国防総省統合外傷システム(the Department Defense Joint Trauma System : JTS)はこの新しい運用上の現実に対応するため医療パフォーマンス最適化(Medical Performance Optimization : MPO)の概念を取り入れながら進歩し続けなければならない。JTSMPOは継続的学習システムとして、戦場での外傷治療を最適化するため、ほぼリアルタイムのデータ収集、分析、知識の導入と物質的な解決策を循環させる速度を進化させることができるTSの意図を捉えている。“kill chain”の理解、決定、行動のように、NTSMPOは観察(observe)、オリエント(方向付け)、決定または理解(decide or understand)、行動(act)、(これらをJTSOODAループと呼ぶ)、を介してJTSMPOサイクルを迅速に完了することに依存する“survival chain”になる。将来の潜在的なLSCOにおける最適な戦傷者治療に対するリスクを軍の指導者に知らせ、21世紀の “survival chain” において、戦場における医療的の優位性の獲得と維持するための戦時的な解決策に重点を置いて議論することがこの論文の目的である。

JTSは最近の紛争では戦傷者が治療の各レベルで能力を高めながら連続体に沿って移動する階層的外傷システムは成果を上げましたが、将来的に陸上または海上でLSCOが発生するという現実は、軍人と国民から期待される優れた治療を提供できるようなシステムを準備するという、我々が直面する挑戦を駆り立てている。データ統合とテクノロジーはMPOには不可欠な要素であり、観察(リアルタイムな関連データ収集)、方向付け(迅速なデータ分析による理解)、決定(決定の速度と精度の向上)、行動(負傷者の治療)のシステムは負傷による戦闘能力の消耗を減らし致死率を最大化するという指導者の期待に応える。前述のBroseは米軍の直面する問題は今では根本的に異なるより緊急性を帯びており、進行テクノロジーを超えている、と言っている。

LSCO の準備におけるJTS目的は、配備された医療システムを改善する新しい技術を提供するだけではなく、MPOのリアルタイムデータ収集を強化することで現在のシステムを継続的に進化させ、より効果的な救命連鎖にすることである。Broseが致死率を上げるために述べているように生存率を向上させ再生を促す解決策には新しい医療改革、新しいメカニズムが含まれる可能性がある。

この論文では、将来の軍事作戦を支援する救命連鎖を提供するための最も喫緊の課題である、負傷時の治療、負傷者の搬送、外科的治療、の3点に焦点を当てる。

  • 負傷時の治療における課題

典型的なRole1における初期負傷者治療(Role1 の治療には、治療、初期外傷治療、前方蘇⽣が含まれます) は、部隊対部隊の戦闘空間に典型的な多くの課題に直面することになる。対テロ戦争中に作成されたデータから、予防可能な死亡のほとんど (88%) は現場で発⽣していることが分かっている。つまり、負傷した時点から最初の治療施設 (Role2) までの期間である。したがって、この段階の外傷治療の課題として、LSCO で優位性を保持ためには、教育、トレーニング、研究のギャップを明らかにすることが不可⽋である。

  • 負傷者の搬送における課題

次の段階の治療は、通常、負傷者を戦闘現場から、より高度な外傷治療と被害制御蘇⽣が可能な場所に移動させることである。しかし、長距離射撃技術と航空戦力を持つ敵との大規模な戦闘では、命を救う可能性のあるこの避難能力を低下させる可能性のある課題が発⽣する可能性がある。その結果、この段階のケアは、依然として従来は役割1の治療と考えられているが、可能であれば最終的な医療避難までの長期負傷者ケア(PCC)が含まれる。この段階では、医療従事者は、動距離を超えて負傷者を移治療する必要がある。多数の死傷者と資源の制約を伴う教義上のタイムライン、言い換えれば、より少ない資源でより複雑な治療が可能になる。

  • 外科的治療の課題

負傷により死亡する戦闘負傷者のほとんどは、⼿術が可能になる前にRole1で死亡しますが、Role2およびRole3の治療の概念は、⽣存可能な負傷者の残りに対して依然として重要である。ダメージ コントロールと根治⼿術がなければ、負傷者は最初に⽣き延びても、出血や感染症や臓器不全などの長期外傷合併症で死亡する可能性がある。たとえば、肝臓から出血している負傷者は、⼿術が可能な施設に到着するまでは延命を図る適切な初期治療を受けられるかもしれないが、その負傷は、外科医が開腹して進⾏中の出血を⼿動で制御することによってのみ、より確実に制御できる。このような状況のため、タイムリーな外科的介⼊がなければ⽣存は危ぶまれるが、ただし、潜在的な同等の不測の事態の戦場では、Role2の施設と高度な外科チームが課題に直面することになる。

政治の世界は未だに『昭和』。今回の衆議院選挙の自民党の最大の敗因は時代遅れに気が付かないこと。

小泉進次郎氏が今回の衆議院選挙の結果の責任を取り選挙対策委員長を辞任した。それを敵前逃亡と非難するコメントも散見する。なぜ、「潔い」と素直な評価にならないのであろうか?結果の責任を取るといった行動を素直に認めないのであろうか?晩節を汚さない上でも、彼は評価されるべきであろう。総裁選の際には、小泉構文とかポエムとか非難ばかりして、彼の本筋が議論されることはなかった。彼は良くも悪くも『令和の申し子』の代表と思われtる。それを「昭和の価値観」しか持たない人々はただ彼を批判し、面白がっている。しかし、彼の行動や価値観は令和そのものと思われる。現在の政治の世界が古いのであろう。もし、今回の衆議院選挙を令和の価値観のを持つ彼で戦ったなら、このような大敗北は避けれたかもしない。従前とは価値観が大きく異なり、「Z世代」、「女性」、一般的な視聴率よりもコア視聴率の時代である。にも拘らず、自民党の政治の価値観は未だに「昭和」であり、この価値観を変えない限り、捲土重来は果たせないと思われる。

記者の教養と知性が疑われる

 9月6日18:28発信のSponici Annexの記事『12日に告示される党総裁選(27日投開票)への立候補を正式表明した自民党の小泉進次郎元環境相(43)が6日、フジテレビ系「Live News イット!」(月~金曜後3・45)にリモートで生出演。(中略)会見の中盤、フリーランスの記者が「小泉さんがこの先、首相になってG7に出席されたら、知的レベルの低さで恥をかくのではないかと、皆さん心配しております。それこそ、日本の国力の低下になりませんでしょうか?それでもあなたはあえて、総理を目指されますか?」と質問。「知的レベルの低さ」というワードに他の記者からはざわめきが起こったが、小泉氏は余裕の笑みで「私に足らないところが多くあるのは、それは事実だと思います。・・・・』を読んだ。

 これはあまりに失礼な質問と言わざるを得ない。個人の過去の一部の高度や発言だけを根拠に『知的レベルが低い』と断言しているが、この記者は一体何者であろうか?一個人に向かって、知的レベルが低いと公衆の面前で質問するのは、これ以上のパワハラはない。このような記者が大手を振って跋扈している昨今、兵庫県知事のパワハラを論ずる資格はない。

防衛省の体質を早急に改善するべき

 不祥事に対する防衛省の処分が発表になった。処分対象は、特定秘密の不適切運用、幹部のパワハラ、潜水手当の不正受給、不正飲食であるというが、自衛隊はその活動上一般人よりは規則・規律厳守に厳しくあるべきである。この規則・規律を守れない者に国が守れるのであろうか。また、処分は内部規定に基づく訓戒などとすると発表されていたが、そもそも内部規定はどのようなものか、誰が判断し決定するのか、従来の事故対応同様、外部には国家秘密扱いのように一切報告されず、客観的評価を受ける気はない。

 最高幹部計5人には内部に基づく訓戒としたとあるが、訓戒程度の軽い処分で済む話なのであろうか。「 訓戒」「訓告」「譴責」は企業による名称の違いで、内容面に明確な違いはなく、大抵は、口頭での厳重注意や文書での通知をするのが一般的です。公務員の懲戒処分における訓告とは、『意味は 教え告げること、戒めを告げることです。 また、公務員の実務上の処分のひとつであり、法律上での処罰にはなりません。 職員の義務違反に対して責任の確認と将来を戒める行為で、主に口頭や文書で注意をします。 「訓告」の場合は、給与などに影響しないことが多くなっていますが、訓告が3回累積すると戒告一回分相当とされています。「訓告(くんこく)」は、職員の義務違反に対して責任の確認と将来を戒める行為で、主に口頭や文書で注意をすることです。法律上での処罰ではなく「戒告」よりも軽い処分です。』とネット上に示されています。憲法改正に際して、自衛隊を軍隊として認めるか否かの議論の前に、まず、隊員はもとより幹部自身も『先ず隗より始めよ』精神で規則・規律準拠、自浄努力をするべきであろう。

 内部に甘い体質、隠蔽体質、外部疎外など今の防衛省に必要なものは客観的な外部評価であろう。いつまでも今回のような、如何にも処分したようであるが内容が低い『パフォーマンス的な処分』は一般人の理解を得ることはない。

『また、落ちた。』が素直な印象

  防衛省は21日未明、海上自衛隊の哨戒ヘリコプターSH60Kの2機が、伊豆諸島東方海域で相次いで消息不明になったと発表した。

 木原防衛相によると、消息不明なのは海自第22航空群の哨戒ヘリで、1機は大村航空基地(長崎県大村市)、もう1機は小松島航空基地(徳島県小松島市)に所属。4人ずつ搭乗しており、夜間に敵の潜水艦に対応する訓練を行っていたという。

 これまでも自衛隊の墜落事故は各地で発生してきた。日本経済新聞でも『最近では2023年4月に沖縄県宮古島付近で陸上自衛隊の多用途ヘリUH60JAが墜落し、陸自の航空機事故として過去最悪の10人が死亡する事故が起きた。防衛省によると、2基あるエンジンのうち1基で、出力が徐々に低下する「ロールバック」と呼ばれる現象が起きたとされる。今回の伊豆諸島東方の事故と同じく、夜間の飛行訓練中に起きた事故もある。17年は海上自衛隊のSH60Jヘリコプターが青森県の竜飛崎沖で墜落。2人が死亡、1人が行方不明になった。海自はフライトレコーダーや機内の音声データなどを分析し、事故の原因が人為的なミスだったと発表している。戦闘機では22年に航空自衛隊のF15戦闘機が石川県沖の日本海に墜落し、隊員2人が死亡する事故があった。19年には青森県沖で航空自衛隊のF35戦闘機が墜落してパイロット1人が死亡する事故が起きている。F35戦闘機の事故はやはり夜間訓練中に起きたとされる。』と近々の事故をまとめている。

 今までも指摘してきた通り、自衛隊の温室かつ密室主義のため、客観的的かつ詳細な評価に耐え得る事故原因調査がなされていない。結果として将来に生かされないず、似たような事故が続いていると思っているのは筆者だけであろうか?

2024年4月3日の台湾花蓮の地震報道について:台湾花蓮地震地震(2018年2月6日)後の3月13日から3月15日に行った視察の知見から

 日本のマスコミの報道は、日本で起こったと勘違いするほどに、大きく報道されていて、日本人的感覚から被災者や救助方法などについて論じている。しかし、台湾は、地震対策はもとより、国民性も異なっており、あまりに日本人的な解釈から報道すると、実態の本質を誤ってしまうので注意が必要である。

 国民性からいえば、日本では東日本大震災後の『奇跡の一本松』のように、忘れ去っていはいけない象徴としてモニュメント化されている。しかし、2018年の花蓮地震の際に崩壊した建築物の代表として報道された雲門翠堤大樓や白金雙星大樓は3月13日の時点で整地化され、周囲にヤシの木が植えられ、ライトアップされ、生々しい崩壊の痕跡を残すものは一切ない。現地の方々から聴取すると前向きに生きるためと言っている。良い悪いということではなく、国民性が違うことに気づかされ、国際救援の際もこのような国民性の相違を十分理解しない支援はかえって相手の感情を損ねることにつながる可能性を心得ておく必要があることを強く感じさせられた。

雲門翠堤大樓(2018年地震直後)

雲門翠堤大樓(2018年3月13日)

白金雙星大樓(2018年地震直後)

白金雙星大樓(2018年3月13日)

 また、災害時の対応体制も日本とは異なっており、その対応の相違も知っておく必要がある。日本的水準から災害対応の良し悪しを論じるべきではない。私が内閣官房として視察した際の2018年台湾花蓮地震の台湾対応に関しては詳細な報告書にして内閣に渡してある。さらに、台湾の災害対策の紹介DVDも作成されており、参考にするべきであろう。興味のある方は当方に連絡して欲しい。

ロシアのウクライナ侵攻2年を経過した現在、敢えて休戦も考える必要あり。

 2022年2月24日ロシアがウクライナに侵攻してから2年余が経過しました。理由はともあれ、主権国家に対して侵攻すること自体は本来『正しいこと』とは言えません。しかしながら、我々は、第一次世界大戦、太平洋戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、などの経験から、各国の思う『正しいこと』の解釈は各国で異なっていることを学びました。また、残念ながら、戦争終結には、絶対的・圧倒的な軍事力的制圧しかない、ということも知っています。

 紛争・戦争は、宗教の違い、民族の違い、政情、大国の思惑、資源の奪い合い、などの原因で起こると言われています。すなわち、誰が考えても普遍的・絶対的に『正しいこと』が紛争・戦争の原因ではなく、各々の独自の原因により紛争・戦争に陥る原因があり、それは当事国以外には理解不能ということです。それを鑑みれば、当事国以外の第三国が当事国のどちらを『正しい』と判断するの基準も、判断する国の宗教、民族、政情、大国の思惑、資源などに基づいた価値観で判断されます。今回の紛争・戦争に関する国連の決議を見ても各国の価値観の違いが露呈しており、これが世界の現状という認識を持って外交を行う必要があると思います。我国のウクライナ支援は宗教、民族、政情、大国の思惑、資源などの判断基準の一体何を判断基準としたかが国民には示されず、た漠然とした『何を正しいこと』ためとの判断か、ただ盲目的・感覚的に、ロシアは悪で、ウクライナは善という単純な考え方に従って、支援しているとしか思われません。当事国以外に彼らの考えている『正しいこと』を分かるはずなく、にも拘らず、我国の周辺ではない遠いヨーロッパの紛争・戦争に著しい金銭支援を実施しているのは、恐らく民主主義の防衛という大国(米国)の思惑に踊らされており、我国の独自外交の姿が見えません。敢えて、どちらの当事国にも支援しないという選択肢もあったにも拘わらず、能登半島地震や子育て対策など本来我国自体にもっと必要とされる支援よりもウクライナに支援する方が優先する状況の説明がなされていないことは憂うべき現状と思われます。

 前述したように、過去の例からしても、戦争終結には、絶対的・圧倒的な軍事力的制圧しかないことから、現状でのウクライナとロシアの戦力分析がとても重要です。マスコミも含めて、ウクライナ寄りの報道が目立ちます。しかしながら、多くの経済制裁を受けているにも拘わらず自力で戦闘を維持できてるロシアと砲弾も含めた兵器を他国からの支援によって戦闘を維持しているウクライナでは、余程のことがない限り、ロシアの優位性は動かないはずです。さらに、米国など直接的に関係の浅い国では対中国の政策上、この紛争・戦争の結果が問題ではなく、ロシアの兵力を削ぎたいという理由であったとしたら、十分その目的は達せられたと思われ、支援の継続は今まで以上に増加はしないと考えられます。最近ではゼレンスキー大統領も西側の支援疲れに危機感を感じていると報道にもあります。つまり、支援を他力本願に依存している以上、自前のロシアに勝利するのは著しく困難と考えるのが当たり前なのですが、多くのマスコミはウクライナ寄りの報道を繰り返しています。

 ウクライナ支援のほとんどは紛争・戦争継続のものであり、何も生まない支援であるだけではなく、インフラの破壊のみならず負傷者・志望者を増やしていっています。セレンスキーやプーチンのメンツによって、多くのウクライナ人・ロシア人が負傷・死亡している現実を考えれば、イデオロギーや大義名分を捨てて、自国民のために敢えて休戦するという方法も考える時期であると思われる。我国もウクライナ・ロシアの両者の被害がこれ以上に拡大しないよう、漫然とした支援ではなく、敢えて休戦を行うように進言する外交の力が望まれる。

JALと海保の固定翼機の衝突の際に救助活動に役に立った、航空業界の「90秒ルール」

 2024年1月2日のJALと海保の固定翼機衝突の際に、JALの乗客や乗員員の救助に貢献した「90秒ルール」について、解説したい。

 出口からの脱出は競う合うから脱出が困難になると言われ、西成活裕先生が「渋滞学」という学問で紹介している。それによれば、流動係数(出口幅1mあたりに1秒間に何人が出るか)については日本の建築基準法ではほとんどの場合1.5程度であり、例ロして、幅50cmの出口から10秒間に5人退出するとすれば、流動係数は5×100/50÷10=1人/m・sと計算される。流動係数はボトルネック幅70cmまでは高く、が70から120cmの幅で一定で、120cmを超えると流動係数はかえって低下する。肩幅40cmでは蟹歩き、70cmではお見合い、120cmでは真ん中に集中し、出口な幅が有効に利用されない。

 このように、退出する際には、出口の大きさも考慮しないと、ボトルネックとなり、human stampede(人の殺到:いわゆる糞詰まり)を起こし、退出がより困難となる。飛行機の退出口もこのような設計施行に基づいている。

 今回の脱出の「90秒ルール」とは、「乗客乗員全員が航空機の全ての脱出口の内、半分を使用して90秒以内に脱出可能でなければならない」というアメリカ連邦航空局が制定した規則により、国際航空運送協会(IATA)が遵守しなければならない規則のことである。ちなみに、筆者が搭乗したBoeing747-400(最大搭乗数:568名、脱出口:12個所)では、脱出口は6箇所使用するので、1脱出口当たり568÷6≒95人脱出口の幅が1mなら、1秒間に1.5人脱出できるので95÷1.5≒63秒という計算になる。乗務員の誘導に従って、落ち着いて競い合わずに脱出行動をすれば、Boeing747-400であっても、63秒で脱出できる計算になる。

 このような、ボトルネックになるような出口や階段には、このような流動係数が算定されており、ある程度知っておくほうが大きな危機の際に役に立つと思われる。

防衛医科大学校のそもそもの設立意義はなんであったのであろうか?期待通りの成果が得られたのであろうか?国会や予算委員会の議事録から考えてみる。

 『防衛医科大学校医学科は、将来、医師である幹部自衛官として必要な人格及び識見を養い、また自衛隊医官に対して自衛隊の任務遂行に必要な医学についての高度の理論、応用についての知識と、これらに関する研究能力を修得させるほか、臨床についての教育訓練を行うことを目的として設立されました。』と防衛医科大学校のHPに記載されている

 しかしながら、防衛医科大学校設立の目的は、第65回国会衆議院内閣委員会第8号昭和46年3月16日を読みとく限り、自衛隊医官の充足医対策であったようである。以下、この目的を読みとくための第65回国会衆議院内閣委員会第8号昭和46年3月16日の必要部分を掲載してある。

 第65回国会衆議院内閣委員会第8号昭和46年3月16日において、鈴木一男政府委員は『自衛隊の医官は、御案内のごとく非常に不足いたしておりまして、私どもは、わが国全体の立場から考えましても、防衛庁は医官の確保の面で見ますと社会的僻地と考えておりますが、そういう面でやはり抜本的に医師の絶対数をふやすという立場に立ちまして、この際大学をつくって絶対数をふやし、歩どまりをよくしていきたいというふうなことを考えておるわけでございます。御案内のごとく、現在までに防衛庁がとっております医官の充足対策といたしましては、貸費学生制度、これは現行月額六千円になっておりますが、その他人事、処遇の改善、医療施設の近代化並びに航空自衛隊の航空医学実験隊というものが立川にありますが、これらの整備拡充並びに海上自衛隊の潜水医学実験部が横須賀にございますが、これらの整備拡充につとめて医官の定着をはかってまいりたいと思っておるわけでございますが、いままでの諸施策ではなかなか医師が定着しないし、また集まってこないというようなことで、やはり独自な絶対数確保の立場で防衛庁所管の医科大学をつくってまいりたい、このような構想を持っておる次第であります。』東中光雄委員『自衛隊の医官不足をなくしていって定着させる目的だということですから、そこで構想されておる防衛医科大学校の卒業者は、自衛隊に勤務することを義務づけるということは、これは設立しようとされている趣旨からいって当然そうなると思うのですが、そういう構想ですね。』東中光雄委員『中曽根防衛庁長官が、いろいろ検討し、各省とも折衝した結果、各種学校としての防衛医科大学校をつくりたいと考える。「防衛医科大学校の卒業生が医師の国家試験を受けられるようにしなければいけない。」そういう構想で進めておるのだという答弁を参議院の内閣委員会ですが、やられたことがありますが、そういう構想は持っておられるわけですね。』東中光雄委員『大学の場合は、学校教育法の五十二条でその目的がきまっているわけであります。防衛医科大学校といわれている場合はそれからはずれるわけですから、全然目的違うわけですね。違うものとしてやはりつくっていこうという構想。』松下簾蔵委員『防衛庁のほうから、防衛庁に勤務しております医官の充足の状況から見まして、その確保のための養成機関を何らかの形でつくりたいという強い御要望があるということは伺っておりますし、私どもも承知いたしております。それをどのような形で今後実現していくかということにつきましては、先ほど防衛庁の衛生局長からもお話がありましたように、四十六年度におきまして調査費が計上されるという予定であると伺っておりますので、その段階におきまして関係各省との間にさらに詰めた協議が行なわれるであろうと考えておりまして、その過程で厚生省といたしましてもいろいろな事情を含めて十分検討いたしたい、そのように考えております。』 東中光雄委員『学校教育法にいう大学の場合は、先ほども申し上げたように、たとえば目的をこう書いていますね。「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」、「知的、道徳的」云々となっているわけですが、防衛医科大学校という場合では、医官の確保というところから出発しているという点で、これは態様がごろりと変わってくるわけであります。しかも国民の健康にあるいは生命に直接関係のあることで、一般的な資格がそういう特殊なルートから与えられていくということになると、これは非常に大きな問題が起こってくるのではないか。特にいまお医者さんの不足というのは、防衛庁の特殊な現象ではなくて、全国的にも問題がいろいろあるわけですから、この機会にお聞きしておきたいのですが、戦後における国立、公立、私立の医科大学、医学部の設置状況これはどういうふうになっておりますか。』東中光雄委員『国全体でそれはあまりふえていない、むしろ一般の大学のふえ方から見ても非常に押えられていると思うのですが、防衛庁だけが医官不足ということじゃなくて、防衛庁に医官が集まらないというのは、それはまた別の理由があるのであって、だから別の体系の医官養成機関をつくっていくというふうなことは絶対に許されるべきじゃないというふうに私たち考えるわけです。四千三百八十、これは入学定員ですけれども、こういう状態でいまの阪大の入試問題なんかが起こってくる一つのもとがあったのじゃないかというふうにも思うわけですが、阪大の入試不正事件を契機にして、医者の養成、医科大学なり大学医学部の制度と申しますか、そういう点でどういうふうな方針なり反省なりをされておるか伺いたいと思います。』東中光雄委員『全国では無医村が三千地区ある。そこはやはり医師を要請しています。沖繩だってそうであります。そういう医師の要請があるからということで今度は医師の養成制度がどうなるかといえば、先ほどの私学の場合のように、これはとてつもない金がなければ入れないような差別が一方でやられている。機会均等が実際上奪われるような社会的不合理性が一方では露呈しておる。一方では官費で、それから給料まで出して防衛庁の医官養成をやっていく。しかもこれは明治以来の体系からはずれる体系のものとしてそういうものがつくられていく。非常に不合理なんですね。これは国民は納得しないですよ。防衛庁に医官が集まらない、定着しないというのは、その原因は何かということを追求すればいいんで、集まらないから、だから国費で特別の養成制度をつくって、しかもそれに一般の医師養成機関と同じような資格を与えていくというような、こういうやり方になると、軍事優先といいますか、必要ならば防衛庁だけは国家予算でどんどんやっていく、一般の医師の養成制度というものを体系的に変えていくようなこともやられていくということになれば、これは医師養成の教育制度を、やはり文部省として、医学校なり医科大学なり大学医学部なりを設置し、その数、要請に応じて、そういう養成制度というものは立てられておるはずなんで、その中で特殊なものだけを軍事優先的なかっこうで認めていくというのは、どうしても納得いきません。それはもう防衛庁は防衛庁の中でやっておることだから、水産大学校なんというのと性質が違うわけですね。そういう点で、ひとつこれは医学の養成制度として全般的に非常に不合理なものが露呈しておりますので、根本的に検討していただかないと困る。このことを強く要請いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。』

 では、充足率は期待通りの成果を上げたのであろうか?政府・防衛関係者の期待通りの結果であったか否かは別として、一定の成果は得られたと思われる。以下に、関係する議事録の抜粋を示した。

 第71回国会参議院本会議第20号昭和48年6月15日では、①上田哲委員の発言『・・自衛隊が、学校教育法上の医科大学でない施設で、特別な目的のために医師を養成することは、医学教育の秩序を乱すものであることは疑いをいれません。これは、質の低下を招くおそれがある上に、この点について責任の所在も求められないだけでなく、特に、一般国民への利益給付は何も期待できないのであります。また、現在、自衛隊の医官は不足とは言いながらも、二百七十一人は確保されているのでありまして、これは自衛官八百五十八人に一人の割合となり、国民一般が九百二十人に一人の医師の割合の中にあるのに比べるならば、決して低い水準ではありません。また、自衛官が年間医師にかかる回数は、一般の五・八一回に対しまして、二・七回と、半分にも満たないという実態もあるのであります。ここに百九十億円の国費を投ずることは、国民全般の医師不足の実態から見て、医療行政上均衡を失する優先処置と考えなければなりませんが、厚生大臣の見解を承りたいと思います。』 ②第71回国会衆議院本会議第47号昭和48年6月28日では、中路雅弘委員の発言『第二の重要な問題点は、防衛医科大学校の設置であります。政府は、防衛医科大学校の設置は自衛隊における医官不足を補うための医官の養成だと説明していますが、その真のねらいは、中曽根元防衛庁長官の訪米報告で明らかなように、アメリカの近代軍事医学、軍医技術を吸収し、米軍援助のもとに、自衛隊による軍事医学研究者の養成及び軍事医学研究を進める体制をつくり上げることにあることは明らかであります。アメリカの近代軍事医学とは、あのベトナム、インドシナ地域において、ボール爆弾や各種の毒ガス、枯れ葉作戦などに代表されるような、残虐な殺傷に使用されたものであることは否定することのできない事実であります。防衛医科大学校の設置がアメリカ近代軍事医学、軍医技術を吸収することを目的としていることは、自衛隊が人民を殺傷するための生物化学兵器の大規模な開発と研究に踏み出すためではないかという重大な疑惑を持たざるを得ないのであります。わが党は、この点を質疑の中で指摘しましたが、政府、防衛庁は、将来どんな研究が行なわれるか、具体的な問題についての答弁をことさら避け、国民の疑惑が根拠のないものでないことを浮き立たせたのであります。また、防衛医科大学校設置が、あの戦前の軍国主義時代にさえなかった自前の医官養成、軍事医学研究体制をつくるという点でも、さらにまた、教育基本法並びに学校教育法に基づく学問・研究の自由を奪った違法なものである点でも、黙視できない重大な問題であります。』 ③第71回国会参議院内閣委員会第29号昭和48年9月18日では、鈴木一男政府委員『病院におきまする医官の状況でございますが、まず陸上自衛隊におきましては、定員百七十二名に対しまして現員が百二十八名、充足率は七四・四%であります。次に海上自衛隊におきましては、定員が三十九名に対しまして現員三十二名、充足率は八二・一%であります。次に、航空自衛隊でございますが、定員二十二名に対しまして現員十四名、充足率は六三・六%でございます。』一方、部隊におきましては、陸上自衛隊につきましては、定員四百五十二名に対しまして現員五十九名、充足率にいたしまして二一丁一%、次に海上自衛隊におきましては、定員七十三名に対しまして現員十一名、充足率一五・一%であります。航空自衛隊におきましては、定員七十八名、現員二十四名、充足率三〇・八%でございます。 ④第208回国会予算委員会第一分科会第2号(令和4年2月17日(木曜日))において、松本尚文科員の質問に対して鈴木政府参考人は『まず、医師の資格を持つ自衛官につきましては、令和三年三月三十一 日時点で、陸海空合わせて約九百九十名おります。そのうち、外科専門 医が約五十名、救急科専門医が約二十名、アキュート・ケア・サージャ リー学会認定外科医はゼロ名となっております。また、看護師の資格を有する自衛官は約千七十名おります。そのうち、 救急看護認定看護師数はゼロ名、集中ケア認定看護師数は若干名いるということになっております。また、年間のISS十五以上の重症外傷例につきまして、自衛隊中央 病院においてでございますが、正確な統計は取っておりませんが、年間 数件程度と承知しているところでございます。』

 1974年の開校から2023年現在までの卒業生総数のデータはないが、自衛医官は1973年の271名から2021年約990名と約719名、48年間に719名増えた勘定になる。単純計算では毎年約15名増加してきたことになる。この数字が期待された数値であるとは到底思えないが、自衛隊医官の定着に関する有効な手段は示されていないと思われる。また、新たに防衛医科大学校に戦傷医療センターなるものが設置されるというが、戦傷には外科系医師が多数必要であるはずが、令和三年三月三十一 日時点で、陸海空合わせて約九百九十名、うち、外科専門 医が約五十名、救急科専門医が約二十名、アキュート・ケア・サージャ リー学会認定外科医はゼロ名という体制で本当に戦傷医療に対応可能なのか、はなはだ疑問が残るのは私だけであろうか?

 医学教育第18巻第1号1987年2月防衛医科大学校副校長医学教育部長高谷 治著「わが国におけるプライマリ(ヘルス)ケアの卒前教育の先導的試行」において、建学の精神として以下のように記載されている。『約15年前に防衛庁として独自の医大が必要であるかどうかについて、故武見太郎先生を委員長として9人の医学界等の学識経験者からなる大臣に対する特別諮問委員会(懇談会)ができ、検討の結果の答申に基づいて設立されることとなったのが防衛医大であるが、その答申の内容の医学教育に関係する部分の大略は以下のとおりである。すなわち、「新しい時代における医療とそれに即応した医療教育のあり方について、問題点の十分な認識のもとに、従来の医師養成のあり方に対する反省の上で現在の医師養成の長所を取り入れるとともに、将来の医療のビジョンを考え、新しい見地からその養成を図ることが適切と考えられ、人格、識見ともにすぐれた有能な総合臨床医の育成を目標として医学教育を実施すべきである。ここでいう総合臨床医とは、一般内科一般外科を基礎とし、人間の健康,疾病に関与する肉体的のみならず、心理的、社会的要因までも理解できるように幅広く訓練され、単独に、あるいはグループ・プラクティスの一員として総合医療を適用できる知識と能力をもつ医師を意味する。さらにその上で医学の本質に則り、専門領域に関する高度の医学研究の遂行が卒業生においてできうるよう必要な方途を講ずるべきである。」としている。これをいいかえれば、従来の医学臨床教育の反省を加味して将来の一般的国民医療のニーズに答えるため、従来の文部省系医科大学の医学教育に加えて総合臨床教育を行い、総合臨床医プラス専門医を作ることが、ひいては自衛隊現状のニーズに答え、また災害等の非常事態にも備えての医療の必要に応じうることとなるという考え方である。』すなわち、1987年の時点では防衛医科大学校は「従来の文部省系医科大学の医学教育に加えて総合臨床教育を行い、総合臨床医プラス専門医を作ること」の精神に基づいて教育を行ったいたと思われる。このプライマリーケアを育成する方針では、どう考えても戦傷医療には対応できないと思われるが、いつの時点から、防衛医科大学校は戦傷医療のスペシャリストになったのであろう?ご存じの方がいれば、是非教えて頂きたい。