本報告書は、米国が核テロを防止・阻止・対応・復旧するための国家戦略と能力が現状において十分かを評価したものであり、18か月の調査の結果、以下の点が明らかになった。
| 核テロ脅威は依然として極めて重大(増大傾向) | テロ組織は過去数十年にわたり核兵器・核物質・RDD(汚染爆弾)獲得を目指してきた。国際的にも国内的にも、極右組織を含む非国家主体が核関連物質に興味を示すケースが増加。情報技術(AI、量子計算、IoT、衛星画像など)が、 テロ側の能力向上と防御側の検知・分析能力向上の両面をもたらしている。 |
| 民生原子力(SMR/新型炉)拡大により、核物質移動量が増加(リスク上昇) | 2050年までに、民生用原子力発電は世界で2〜3倍に拡大。新規参入国は安全保障・規制能力が弱く、高リスク。ロシアによるウクライナ原発攻撃のように、核施設自体がテロ/軍事攻撃の対象となり得る時代に突入。 |
| 放射性物質(Cs-137など)によるRDD/REDリスクは依然高い | 医療機器・産業機器に使われる高リスク放射源は世界中に分散。廃棄コストの高さから「孤児線源(orphan sources)」が多く、盗難や悪用の温床。NNSA の代替技術導入(X線移行など)は進むが、さらなる加速が必要 |
| 国際物流(サプライチェーン)・海上輸送の脆弱性が大きい | シールドした核物質は、ほぼ検知されずにコンテナで運ばれ得る。「信頼された荷主(Trusted Shipper)」を悪用されると検知は極めて困難。核テロが港湾で発生した場合、世界物流が停止しパンデミック級の経済損失。 |
| 検知・阻止技術には進歩があるが、普及・統合不足 | AI活用による異常検知など有望技術は存在。しかし、サプライチェーン全体での実装が遅れている |
| 米国内の対応力(州・地方)は不十分なまま | 放射線医療や避難・汚染除去に関する州・地方の知識・訓練が不足。事故後の長期復旧基準(除染レベル)に国家的合意がない。デマ・誤情報(MDM)対策も弱く、対応の大混乱が懸念される。 |
| 連邦政府の「全体統括(leadership)」が弱い | 各省庁(DOE、DHS、NRC、DoDなど)は強力な能力を持つが、 全体統括する唯一の指揮機関が存在しない。ホワイトハウスが主導する一元的な「核テロ統合戦略」が必要。 |
一言でまとめるなら、核テロは新たな形で深刻化しており、米国の現行戦略は不十分であり、連邦政府による強力な統合リーダーシップが必要、国際協調の再拡大、放射性源削減、サプライチェーン強化、州・地方の能力向上が不可欠、ということになる。
これを基に、核テロ・放射線脅威 に関する総合「リスクヒートマップ(Impact × Likelihood)」は表のようになる。
| 脅威カテゴリ | 影響(Impact) | 可能性(Likelihood) | リスク評価(総合) |
| IND(即席核爆発) | Catastrophic(都市壊滅、数十万死傷、経済崩壊) | Low | High |
| RDD(ダーティボム) | High(都市中心部の長期使用停止、経済混乱) | Medium–High | High |
| RED(隠匿照射装置) | Medium–High(健康被害、恐怖・混乱) | Medium | Medium–High |
| 核施設攻撃(戦時・テロ) | Very High(長期避難・国際的影響) | Medium | High |
| 核物質密輸/サプライチェーン悪用 | Very High(爆弾製造に直結) | High | Very High |
| MDM(誤情報・偽情報) | Medium–High(避難失敗・政府不信) | Very High | Very High |
全脅威に対する総合優先度を挙げると以下のようになる。
1. 核物質密輸対策(AI検知)
2. 高リスク放射源削減(Cs-137)
3. MDM(誤情報)対策の基盤整備
4. 原発の戦時攻撃対策の設計更新
5. NESTのプレデトネーション強化
6. 孤児線源回収(全球)
7. 港湾の高度検査・サプライチェーン保護
8. 医療界の放射線教育(RED/RDD対応)
9. 線源追跡のデジタル化・リアルタイム化
10. 州・地方の避難・除染基準の標準化
