ここのところ、有名な方々が「アビガンが効いた」というコメントをSNS等で公表しているが、日本感染症学会によれ
・特別な治療法はなく、二次性の細菌性肺炎の合併に注意する
・新型コロナウイルスによる感染症に対する特別な治療法はない
・脱水に対する補液、解熱剤の使用などの対症療法が中心
・一部、抗HIV薬(ロピナビル・リトナビル:カレトラ)や抗インフルエンザ薬(ファビピラビル:アビガン)が有効ではないかという意見もあるが、まだ医学的には証明されていない。
・新型コロナウイルス感染症による死亡の原因に関しての情報は限定的ですが、高齢者における死亡例が多いことからも二次性の細菌性肺炎の合併には十分注意する必要がある。
・ステロイド等の使用に関する知見も不十分である。
・本邦において新型コロナウイルスの分離・培養が成功したことから、将来的なイムノクロマト法による迅速診断法の確立、また SARS や MERSを含めた新型コロナウイルス感染症に対する特異的な治療薬の開発が期待される。
が現状である。
例えれば、医師は戦いに際して有効な武器を持たないで戦っている。一方、患者はアビガン服用を希望したとしても必ずしも投与されるとは限らず、たまたま治験施設に入院できれば投与される可能性がある。すなわち、残念ながら、入院する施設の違いによって治療が異なり、治療の公平性が保たれていない。
現状で考えられる薬剤に関してまとめると以下のようになる。
【日本国内で入手できる薬剤の適応外使用】
・カレトラ(HIV感染症薬:上の表参照:プロテアーゼ阻害剤:1回2錠1日2回又は4錠1日1回)
(https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00110/031600009/)
(https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/03/16/06694/)
重症患者の著明な改善、死亡率の低下、ウィルスの消失は見られなかった。
(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14305)
※日本感染症学会のコメント
(http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_antiviral_drug_200227.pdf)
現在日本では COVID-19 に適応を有する薬剤は存在しない。よって行う事のできる治療 は、国内で既に薬事承認されている薬剤を適応外使用することである。使用にあたっては
各施設の薬剤適応外使用に関する指針に則り、必要な手続きを行う事とする。本指針では現時点で日本での入手可能性や有害事象等の観点よりロピナビル・リトナビルを治療薬と
して提示する。今後臨床的有効性や有害事象等の知見の集積に伴い、COVID-19 の治療の ための抗ウィルス薬の選択肢や用法用量に関し新たな情報が得られる可能性が高い。
投与方法(用法・用量):
1. ロピナビル・リトナビル(カレトラ®配合錠):400mg/100mg 経口 12 時間おき、10 日間程度
2. ロピナビル・リトナビル(カレトラ®配合内用液):400mg/100mg (1 回 5
mL)経口 12 時間おき、10日程度
ロピナビルは HIV-1 に対するプロテアーゼ阻害剤として有効性が認められている。 シトクローム
P450 の阻害によりロピナビルの血中濃度を保つためリトナビルとの合剤(ロピナビル・リトナビル:カレトラ)として使用される。コロナウイルスに関する明確な作用機序は明らかにされていない
・クロロキン(抗マラリア薬):COVID-19 に対する効果は不明であるが,In vitro での抗 SARS-CoV-2 活性が示されている.
『日本感染症学会「COVID-19 に対する抗ウイルス薬による治療の考え方・第1 版」抗ウイルス薬を検討する患者』には,次のように記されている.
*50 歳以上の患者で、低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった患者
*糖尿病・心血管疾患・慢性肺疾患,喫煙による慢性閉塞性肺疾患,免疫抑制状態などのある患者,低酸素血症を呈し酸素投与が必要となった患者
*年齢にかかわらず,酸素投与と対症療法だけでは呼吸不全が悪化傾向にある
患者
この考え方では,呼吸不全の出現(通常は第7病日以降)を必要条件としているため,早期投与とならない可能性が高い.抗ウイルス薬の有効性については,今後の中国などからの臨床試験の結果が待たれる.
・アクテムラ(抗リウマチ剤:「サイトカイン」と呼ばれるたんぱく質「インターロイキン(IL)6」の働きを抑える薬:1回8mg/kgを4週間間隔で点滴静注)
大阪はびきの医療センターでの治験
(https://www.asahi.com/articles/ASN4F5FZSN4FPLBJ001.html?iref=pc_ss_date)
・FOY(新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際に、細胞の膜上にあるACE2と呼ばれる受容体たんぱく質に結合した後、やはり細胞膜上にあるセリンプロテアーゼと呼ばれる酵素の一種であるTMPRSS2を利用して細胞内に侵入していることを突き止めた:1回200mg1日3回)
(https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00110/031600009/)
(https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/03/16/06694/
・プラケニル(hydroxychloroquine)1日1回200mgまたは400mg:SLEの適応薬剤であるが米国で有効性があったとされる。また、国立病院機構福岡東医療センターの論文がある。
(http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200310_2.pdf)
SLE、皮膚エリテマトーデスの適応を有するが、網膜症を起こす。臨床的な有効性があったと中国国家衛生健康委員会が報告している。
(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14305)
・BCG:比較的前向きな報告もあるが(https://diamond.jp/articles/-/234432?page=4)、否定的な意見もある。(https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/4264/)
・ビラセプト(抗HIV剤:プロテアーゼ阻害剤)+セファランチン(白血球減少治療剤)
抗エイズウイルス(HIV)薬ネルフィナビルと白血球減少症治療薬セファランチンの併用が効く可能性があるとの研究結果を、国立感染症研究所や産業技術総合研究所などのチームがまとめた
【日本国内で入手が困難な薬剤】
・ レムデシビル(核酸アナログ薬):抗エボラウイルス薬として開発中であるが,コロナウイルスにも活性を示す.最近,MERS-CoV感染霊長類モデルで治療効果が確認された.
・アビガン(ファビピラビル(RNA 合成酵素阻害薬)):投与量はSFTS に対する治験や医師主導型臨床研究に準ずる.In vitro での抗ウイルス活性が確認されている。国内で承認済みであるが条件付き治験中。
・オルベスコ(シクレソニド(吸入ステロイド薬)):SARS-CoV-2 に対し抗ウイルス活性有
200 μ g インヘラー1日2回,1回2吸入,14日間.(日本感染症が学会による治験施設囲い込みにて入で困難)
(https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00110/031600009/)
(https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/03/16/06694/)
シクソレニドの使用法については
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_note_ciclesonide.pdf参照