ダメージコントロール戦略

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ダメージコントロール(damage control:以下と略す)の概念は1980年代初期から開腹中の低体温や凝固異常を伴う出血性の外傷患者の治療の新しいアプローチとして利用されてきた。1990年代に入り、一部の著者らはこの外科的蘇生戦略に「DC」という言葉を当てはめ、DCを3つの明確なフェーズに分けた。
①第一のフェーズは生命危機の出血の止血と大きな腸管の漏出を止める(根本治療ではない)開腹術を行う(damage control surgery:以下DCS)。
②第二のフェーズはアシドーシス、低体温、外傷性の凝固障害を正常な状態に回復させる。
③第三のフェーズは手術室に戻って根本手術を行い第一のフェーズで行った一時的な処置を再建し正常な生理学的状態に戻す。
ダメージコントロール蘇生(damage control resuscitation:以下DCR)の概念はこれと同じ概念から展開してきた。DCRはこの3つのフェーズに渡る蘇生概念である。特殊な外科的アプローチ(DCS)が必要な患者に対して特殊な蘇生形式の概念(DCR)を発展させてきた。DCRは3つのフェーズから構成される。
①permissive hypotension(許容される低血圧):意識のある患者において抹消動脈の脈触知の維持
②蘇生戦略に基づいたクリスタロイド輸液の最小化(低体温進行や希釈の防止)
③血液製剤の投与(濃厚赤血球:血漿:血小板=1:1:1、もしくは、血液製剤ではない全輸血もしくは新鮮血)。生命危機的出血が確認された患者に検査で貧血、凝固異常が判明する前に投与する。

Holcomb JB, Nunez TC : 58Damage control resuscitation : Front line surgery: a practical approach. Springer New York 2011 : 47-58

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