TCCC(tactical combat casualty care:戦傷傷病者治療戦略)

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 2001年米軍は、「Committee on Tactical Combat Casualty Care(戦傷傷病者治療戦略会議)」を通して戦傷傷病者の治療と予後を改善するため、戦闘現場における外傷治療の正式なシステムを作った。このシステムは米国外傷治療システムを基礎とし、戦場の実践モデルとして適用された(2006年)。2004年に実施され、TC3(=TCCC:tactical combat casualty care:戦傷傷病者治療戦略)の概念を組み入れ、5段階の治療構造を組織した。
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このことにより、米軍の戦闘死亡者数は減少し、ベトナムでの死亡率15.8%から「不朽の自由作戦(OEF:operation enduring freedom)」や「イラク自由作戦(OIF:operation Iraq freedom)」での死亡率9.4%までに減少した。この体制はNATOにも普及し、世界の戦場に急速に広がっている。
 米国では戦場で死亡する約90%が医療施設に搬入される前の死亡であることからcombat medics(コンバットメディックス:陸軍の衛生兵)、corpsmen(コープスマン:海軍の衛生兵)、PJs(pararescuemen:パラレスキューマン:空軍の衛生兵)より行われる戦傷の治療の重要性が論議された。米国の軍隊の戦場の医療従事者(combat medical personnel)は現在では戦傷傷病者治療戦略(TCCC:tactical combat casualty care)ガイドラインに準拠して戦場で処置を行っている。TCCCは米軍特殊作戦司令(the US Special Operation Command:USSOCOM)における生体医学的研究プロジェクトとして開始された。1996年にTCCCの原本が軍陣医学(Military Medicine)に公表され、その後12年間は恒常的な進歩と各戦場用に個別化され、TCCC委員会(CoTCCC:the Committee on TCCC)によって基本に従って最新化された。TCCC委員会は外科医、救急医、軍医、衛生兵(combat medics、corpsmen、PJs)から構成され、戦場の外傷処置の改善を続け、1998年に病院前外傷救命処置(Prehospital Trauma Life Support)実行委員会と連携を結び、2004年に米軍外科研究所(US Army Institute of Surgical Research:USAISR)と重要な連携を結んだ。USAISRはアフガニスタン、イラクの死者の「防ぎ得る死亡(preventable death)」の現認について最初の分析を行い、全ての戦闘員に基本的なTCCCの必要性を強調した。USAISRはその後、戦場の初期対応者(battlefield first responder)に焦点をあてた研究を発展させ、タニケット、止血用資材、結合部タニケット、胸部シール、病院前輸液蘇生などについて飛躍的な報告を発表した。この仕事によりUSAISRは戦場外傷処置と治療戦略の評価において防衛省(DoD:department of Defense)の指導的立場を確立した。USAISRはTCCCのスポンサーであるUSSOCOMに、最新のTCCC技術を与えた特殊部隊が戦闘から帰った時に訓練と装備についてのフィードバックを確実に得られるようにさせ、この計画の成功によって、やがて特殊部隊に加えて通常部隊にも適用されるTCCCが設立された。