シナリオ訓練②都市の中でRPGによる攻撃

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NAEMT’s Prehospital Trauma Life Support : Military Eighth Edition 2014:744-745
市街をパトロール中に、あなたのチームは小火器とロケット推進RPGの攻撃を受けた。先頭に立つ兵(point man)と二番手が撃たれ、チームは応戦し迅速に待ち伏せしていた敵を排除した。他に負傷兵はいない。周囲の安全を確保し、隊長はあなたに負傷兵の治療を行うよう指示した。
  あなたは負傷兵①に近づき、素早く生命危機的な外傷のPSを実施した。意識は清明で呼吸は速いが努力性ではない。あなたは右の上背部に入射口を思わせる小さな穴の創と右のわきの下に大きな出射口と思われる創を見つけ、そこから拍動性の出血があった。

①まず何に着目しますか?
 生命危機的出血であり、救命処置が早急に必要である。

②どのように処置しますか?
 素早く創部を露出し、創部にコンバットガーゼを詰め3分間直接圧迫する。この処置をする一方、気道と意識状態をチェックするために負傷兵に声をかける。3分間後止血できたらコンバットガーゼの上から圧迫被覆する。この被覆は入射口にも行う。
 あなたは負傷兵が不安状態になり呼吸が短くなったことに気が付く。他の出血源をチェックし、無いことを確認する。突然負傷兵の反応がなくなり、左の橈骨動脈の脈が触れなくなり、呼吸が浅く速くなった。

③何が起こっていると考えるか? 
 胸部の創の位置と突然の代償不全から、緊張性気胸を疑う。

④それに対する対応は?
 右の胸部の針による脱気を来ない、シューツという空気が逃げる音を聞く。負傷兵は再び意識が戻り、呼吸数と呼吸の深さが改善したことに気が付く。

⑤次に何をするか?
 脈の再確認をし、橈骨動脈の脈が正常になった。

⑥次に何をするか?
 右側を撃たれたという負傷兵②に移動する。負傷兵は意識消失がなく意識は清明であるが、呼吸の促拍感を訴え不安状態である。観察の結果、乳頭の上の右中腋窩線上に破片創だけが見つかった。創は約1/4サイズであり破片は戦闘服のプレートの間から滑り込んだと思われる。創からはサッキング音とシューツという音が聞こえる。

⑦診断は?
 開放性気胸(サッキング創)

⑧負傷兵をどのように処置するか?
 弁付きシールで覆い負傷兵の呼吸を改善させる。

⑨その他知りたいことは何か?
・出射口は? 見つけられない
・循環動態は? 意識は清明で見当識もあり、橈骨動脈の脈は強い
・神経学的所見は? 覚醒し見当識もあるし、四肢も動かせ、大まかな感覚障害もない
・その他の外傷は? 無い

司令部に2名のMEDEVACを要請する。ヘリコプターの構想を予想し、生食による静脈路のロック他鎮痛剤投与を含む準備をする。

⑩どんな鎮痛剤を使用するか?
 負傷兵①は著しい疼痛を訴えていないので鎮痛剤は延期した。傷病者②は呼吸を損なう可能性があるのでケタミンを使う。ヘリコプター搬送時の冷たい環境が低体温を誘発しないよう負傷兵をHypothermia Prevention and management Kits(HPMKs)に負傷兵を入れる。フライトパラメディックに可能なら飛行中ドアを閉めるよう思い起こさせるよう計画する。

⑪次に何をする?
 ヘリコプター到着を待つ間にTCCC傷病者カードを完成させる。軍用DUSTOFFヘリコプターによって負傷兵は後送されるが、離陸後すぐに背部から右腋窩を撃たれた負傷兵が突然呼吸促拍になり酸素飽和度形にて低酸素状態になった。フライトパナメディックは、気体は高度により膨張するというボイルの法則を思い出し、胸膜腔に閉じ込められた空気が膨張し単純な気胸が緊張性気胸になった可能性を考え2回目の針による脱気を行った。負傷兵は劇的に改善した。

⑫フライトパラメディックは何を知るべきか?
 外出血の観察同様、負傷兵の呼吸、血圧、酸素飽和度のモニターを続ける。DUSTOFFユニットは負傷兵をrole3施設に搬送し現病歴を救急スタッフに伝達する。