第1回練度維持訓練 2018年11月1日

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 今日自衛隊衛生学校で実施された第一線救護衛生科隊員の卒後教育である練度維持訓練の第1回目を見学させて頂いた。訳あって防衛省コンバットメディカルコントロール委員会の外部委員を辞し一般人となった後もこのような訓練を見学できるのは防衛省衛生監のご厚意のお陰と非常に感謝している。
 今回は聞くところによれば、5名1組で各々グループ内での想定シナリオを教授役受講生役を交互に演じ、自身の練度だけではなく教授法も身につけさせる訓練だそうである。一見学者意見を言うのはおこがましいが、さらなる進歩を期待した上での提言(苦言?)の一部を述べたいと思う。参考にして頂ければ有難い。
 練度訓練というには、第一線救護衛生科隊員としての修練度を確認し向上させ質を保証することが目的と思われるが、今回はさらに教授法まで伝授するということであるので、まず訓練ということ自体を考えてみる。
 訓練(Training)とは修練一連の動きあるいは方法または訓練される過程あるいは経験を指し、試験(testing)と実習(exercise)がある。試験は人の知識・能力・資格を決定するための質問、問題、習練の一連セットであり、実習は実際的な活動や行動や実践、身体または心理学的トレーニングや成長のための活動であり体系的な研修を意味する。実習はさらに図上(机上)訓練(table exercise)、ゲーム(game)、教室実習(classroom exercise)、部門別訓練(functional exercise)、総合訓練(full-scaled exercise)があり、目的や獲得目標により切々なものを選ぶ。管理監督者(指揮者)になる可能性のある者は実践的な訓練を通して迅速かつ正確な決定を下せるよう平常時からの鍛錬が必要であり、そのためにはfull-scale exercise が重要と言われている。
 訓練には①特殊な課題に対応するに十分なレベルに到達させ、その能力を維持するための修練、②治療中に重要かつ必要な処置を頻回に実行できるよう重要かつ必要な処置を多くそうでない処置を少なくするという訓練中の処置の頻度を変える、という2つのステップがある。さらに、いくつかの処置は重要で非常に複雑であるため訓練の持続が必要である。多数傷病者発生では非常に簡単なプロトコルが必要となり、また、その場限りの基本で実施されるため「Just In Time Training」と呼ばれる訓練も必要である。exerciseとdrillは論理的には同じであり同様に扱われるが、前者は予期された想定や方法に沿って練習させ受講生にその能力を維持させることを主眼とし、後者は精度管理のために予期しないシナリオで行われ将来の訓練を改善するための方法を模索する。受講生の能力や目的によってexerciseとdrillを使い分け訓練の質を向上させる。
 この基本的な概念から見るに、今回の練度訓練はexerciseが主であるべきと考えられる。英軍のテリック作戦、へリック作戦でも多くの者は戦闘のプレッシャーのため十分対応できなかったという事実からしても、一つ一つの技術や能力を繰り返し訓練し実践に備える方が良いと考えられるからである。その上でadvance的なdrillを付加するのが最良と思われるが、excerciseとdrillが混在し、かつ、exerciseの練度は今以上の進歩が必要と感じられた。また、今回さらに教授法も伝授するなら訓練方法論に関する学問知識が必要と考えらえるが、現状ではこれも不足していると感じられた。exerciseは予期された方法で「生徒にその能力を維持させることを可能にするために行う」、drillは予期しないシナリオで「従来の訓練を改善するために新たな訓練の方法を提供するために行う」を分かった上での教育実習が求められる。
 また、訓練実習法としてはgameである。gameである以上ある程度のリアリティだけではなく修飾が必要であるが、そこには修飾することによってリアリティが誇張され、それによって記憶が鮮明化されることが求められる。
①爆発による下肢切断からの大量出血に際して、まず、必ず衛生科隊員の膝で負傷者の鼠径部を圧迫し出血を抑制した上でCATを装着している。その後、爆風なので骨盤骨折疑いだから骨盤バンデージをするという流れになっている。しかし、骨盤骨折であれば膝で鼠径部を圧迫した時点で分かるであろうし、またこれによって骨盤骨折が悪化する。このような矛盾を分かった上で訓練は行われているのだろうか。骨盤骨折の処置をさせてはいるが、付け足しのような感じで、骨盤骨折の認知の重要性が伝わってこない。
②ショックと言いながら、脈の確認やバイタルの確認が重要視されていない。TCCCのフローチャートでも5分間隔のバイタルチェックは推奨されている。患者の評価、処置の前後、時間経過によるバイタルチェックの重要性が薄く、また、TCCC改定の目玉の一つであるサチュレーションモニターも生かされていない。
③訓練の主体はTFCであり、そこに重点が置かれている。処置中砲火を浴び一旦処置を中止し、制圧後再度処置をするシナリオがある。砲火時には作戦優先という意識づけは充分理解できるが、恐らくこのような短時間に制圧できることはないので、応急処置の中断をどこで行うかを教える出来であろう。例えば輪状甲状靱帯切開であれば靱帯切開までやってしまっても中断するのか、など考えさせた方が良いと考えられる。作戦のためには切開して放置すれば血液など垂れ込みかえって気道を閉塞し死に至らしめるという苦しい決断を迫られることもあり得るというリアリティを伝えるべきであろう。
④戦場では時間的要素が肝要であるにも関わらず時間軸が重要視されていない。この想定では何分以内に終了すべきというメッセージが伝わってこない。

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